今のままでは使いものにならない―― IoTの課題とIIJの取り組み:Weekly Memo(2/2 ページ)
IoTへの期待が高まる一方、その課題にも注目が集まっている。最大の課題は、数ミリ秒以内のほぼリアルタイムのレスポンスが求められること。IIJが新サービスの発表を機に掲げた、この課題への取り組みとは。
ネットワークの低レイテンシ化がIoTの最大の課題
では、IoTの仕組みに関する今後の課題と方向性はどうか。染谷氏はその前提として、将来のIoTを支えるネットワークの規模についてこう語った。
「2020年には全世界で500億デバイスがつながるといわれている。このうち、日本は世界のGDP比で約5.5%であることから、27.5億デバイスになる。この数字は日本での携帯電話契約数約1.5億台(2015年度末)の20倍近くに相当する」
その上で同氏は、来るべきIoT時代に向けて2つの課題を挙げた。まず1つは、ネットワークにおけるレイテンシ(遅延時間)の問題である。「医療系ITや産業機械、車の自動運転については、レイテンシを数ミリ秒以内のほぼリアルタイムにすることが求められている。現状では、地方から東京のデータセンターまでのレイテンシは数十ミリ秒かかっている。これをどう短くするかが、これからの大きな課題だ」と同氏は言う。
もう1つは、セキュリティをはじめとした高信頼性の問題である。「今後はIoTにおいて、人命に関わる医療機器や車などもデバイスとしてネットワークにつながるようになる。そうしたネットワークには、セキュリティをはじめとして高い信頼性が求められる」と同氏。「そのためには、これまで培ってきたネットワークを根本から構築し直さなければいけない」と指摘した。
IoTの課題として、セキュリティをはじめとした高信頼性については、現在のITシステムから通じる問題として広く知られているように思うが、レイテンシについてはまだ一般的に問題意識として高まっていないのではないだろうか。
IIJの鈴木幸一 代表取締役会長兼CEOはこの点について、「IoTの最大の課題は、ネットワークのレイテンシをいかに短くできるか、ほぼリアルタイムのやりとりを実現できるかにある。しかもモノとモノがやりとりするとなると、ワイヤレスのネットワークでそれを実現しなければならない。車の自動運転などは、そうした技術が開発され、運用環境が整備されないと使い物にならない」と強調した。
こうしたレイテンシの問題に対処するため、IT業界では今、「自律分散型クラウド基盤の構築とその制御・管理の自動化」への取り組みが注目されている。自律分散型クラウド基盤というのは、クラウドにおける処理を一極集中型でなく、データの発生現場に近いところに分散して自律的に行う仕組みのことである。しかもその制御・管理を自動的に行うことによって、ほぼリアルタイムの処理を実現しようというものだ。「エッジコンピューティング」や「フォグコンピューティング」などといわれる仕組みが、これに相当する。
こうした仕組みは、IIJでも「“マイクロデータセンター”を各地域に設置していくことを検討している」という。
IoTは今、ブームともいえる加熱ぶりだが、インターネットが出現したときから、やがてやってくる世界であろうことは想像がついた。難しいのは、多くの場合、ほぼリアルタイムのレイテンシでないと使い物にならないことだ。ただ、近い将来、それを実現する技術や仕組みが登場するところまで来たという感じがする。レイテンシを念頭に、大いに注目しておきたい。
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