第20回 大量データで逆に安全? 注目されるブロックチェーンの仕組み:クラウド社会とデータ永久保存時代の歩き方(2/2 ページ)
たくさんのデータが拡散することでリスクが高まると思いがちですが、意外にもその状況に対応する技術を活用すれば、むしろ安全になると期待されています。今回はFinTechで注目されているブロックチェーンとストレージの関係をひも解いてみましょう。
逆転の発想でデータを安全に保存する
ブロックチェーンという言葉を聞いたことがなくても、ビットコインといえば聞いたことがある人も多いでしょう。ビットコインは、次世代の世界共通通貨として注目を浴びていますが、それをやり取りする仕組みがブロックチェーンです。
従来は、銀行などの中央管理システム間でしかやり取りができなかった決済などが、個人から個人への直接やり取りでも可能になります。いわば貨幣のインターネットのようなものでしょうか。通信のやり取りが、ツリー型の電話交換機からネットワーク型のインターネットに移行してきたのと同じように、ブロックチェーンには低コストで処理が早く、さらに拡張性が高いという特徴があります。
それに加えて、金融取引ならではのセキュリティの高さ、取引のトランザクションを記録する台帳が、安全に分散保存されるといった機能も大きな特徴です。この台帳があることで、故意または何らかのバグで一部の台帳のデータが改ざんされても、それ以外の台帳と比較することで、そのデータが正しいかどうかが確認できる仕組みです。
つまり、ブロックチェーンの考え方をクラウドのストレージに活用することで、データが拡散していく状況においてはセキュリティリスクが高まるというより、かえって安全になるという可能性が出てきます。
このように期待されるブロックチェーンですが、次回はこの考え方を取り入れた「StorJ」(ストレージと発音)について解説します。
著者:井上陽治(いのうえ・ようじ)
日本ヒューレット・パッカード株式会社 ストレージテクノロジーエバンジェリスト。ストレージ技術の最先端を研究、開発を推進。IT業界でハード設計10年、HPでテープストレージスペシャリストを15年経験したのち、現在SDS(Software Defined Storage)スペシャリスト。次世代ストレージ基盤、特にSDSや大容量アーカイブの提案を行う。テープストレージ、LTFS 関連技術に精通し、JEITAのテープストレージ専門委員会副会長を務める。大容量データの長期保管が必要な放送 映像業界、学術研究分野の知識も豊富に有する。
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