第18回 我が社のデータの値段はおいくら? 計算して気づく価値:クラウド社会とデータ永久保存時代の歩き方(1/2 ページ)
日頃何気なく使っているデータベース、文書、写真や動画など、デジタルネイティブ世代には空気のような存在であるデジタルデータですが、もしそのデータがなくなったら、損失はいくらになるのでしょうか?
データの価値、実は決まっている!
データの価値は失ってはじめて気づくもので、事前に計算することはあまりないのではないでしょうか。連載第15回のランサムウェアの記事で少し説明しました、12兆円規模にもなるといわれる闇のマーケット「ブラックマーケット」からヒントを得てみましょう。
このマ―ケットでは、さまざまなデータが「市場価格」で売買されています。「製品の価値は市場が決める」という言葉もありますが、実際のマーケットが決めている価格を参考にしてみるのも、良いでしょう。
例えば、取引数の一番多いデータの一つにクレジットカード番号があります。これが、いったいどれくらいの価格で取引されていると思いますか。それなりの金額かと思いきや、意外にも安くて、米国では5〜8ドル、英国では20〜25ドルくらいという調査報告があります。また、クレジットカード会社によって価格が違います(参考リンク)。
もしもの時の手段
このようなデータを見ていると面白いことに気づきます。これらのクレジットカード情報は、国やカード会社、また、付属する情報によって価格がかなり異なるということです。それぞれの経済状況や、国民平均所得、貯蓄額、さらにはクレジットカード会社の顧客平均所得なんかも推測できるかもしれません。
クレジットカード番号だけでは安くても、個人のID情報や誕生日の情報が加わると、2倍に跳ね上がります。これは単純に、IDや誕生日が分かると、暗証番号が解読しやすいというその割合から来ている価格とも考えられます。価格が2倍であれば、成功確率も2倍が期待できるといったロジックです。
このようなマーケット価格を見ると、保険の価格設定に、非常に似ている気がします。クレジットカード番号がこれくらい集まれば、これくらいの収益があって、だから単価はこれくらい、という具合です。逆にこれを損失で考えると保険商品になるでしょう。米国のあるセキュリティ会社の調査(参考リンク)によると、ロストした企業のデータ量はここ2年で400%の増加率を見せ、1.7兆円に達しているといいます。また1件の損失額は最大200億円とも言われています。これだけの金額を「すぐに出して」と言われても無理でしょう。そこで保険に入れば、その分の費用を負担してくれます。いざという時のために、データにも保険をかけておくべきではないでしょうか。
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