第13回 システムの運用管理を外部委託するときにIT部門がやるべきこと:データで戦う企業のためのIT処方箋(2/3 ページ)
ITシステムを自前で管理することは自由度や変更の俊敏さにつながりますが、日々の運用で精一杯の状況では新しい技術の習得などが難しいもの。アウトソースはIT部門の負担を減らす古くからの解決策ですが、丸投げではシステムの柔軟性が損なわれるだけです。今回はデータ爆発時代に合わせてどう変えていくべきかを紹介します。
MSPへのアウトソースとは?
ITシステムに関する業務をMSPにアウトソースすることで、複雑な基本設計や運用管理を任せ、効率的な運用を実現することが第一の目標です。ビジネスプロセス全体を委託するかどうかはともかく、Webサイトのホスティングなどまで含めれば、ほとんどのユーザー企業で少なからず何らかのアウトソーシングを実施しています。
この方式のメリットは、「餅は餅屋に任せる」ということ。ユーザー企業は本業に集中できるという点に尽きます。
MSPによってはITインフラの知識だけでなく、ユーザー企業の業界・業種に特化したベストプラクティスに精通している事業者もいますので、ITシステムの多くの領域でこれを効率よく適用することが可能です。例えば、小売業の販売管理に特化した業務サービスを合わせて提供する、ガソリンスタンドのPOS端末管理をネットワーク経由で提供する、といったものがあります。こういったMSPは該当する業務パッケージソフトを提供しているベンダーだったり、特定業種内のIT子会社が源流になっている会社だったりと背景はいろいろです。ITインフラだけを提供する大手とは少し異なったアプローチが特徴的でしょう。
これらのサービスは、企業の経営層からすれば非常に重要かつ効果的なメリットです。副次的なメリットとしては、ITシステムの運用を共用環境にすることでコストを低くできることや、最新技術を比較的容易に実装していけるという点が挙げられます。ただし、この方式には注意点もあり、預ける範囲を広げるほど自社内でのIT管理能力の低下を招くというデメリットが生じてしまいます。
アウトソースといっても、預ける先が元々は自社のIT部門で子会社になったといった実質的にはオンプレミス型という特殊な場合を除き、どうしても社外の人からの声はなかなか現場には届きません。その結果、自社スタッフによる改善策の企画や課題認識に遅れが出てしまい、エンドユーザー部門との交流も減少することで、使いにくい(効率の悪い)システム設計やITリテラシーの低下が発生する可能性が高まります。
この課題を防止するには、IT部門としておおよその方向性と意思決定をする人員、できればCIOまたはCIO相当の人材を社内に確保し、少なくとも計画段階ではユーザー企業が主導し、かつ現場サイドと有効な交流を維持できるようにすることが必要です。
ただし一朝一夕にはできませんので、経営層が上記のデメリットを経営リスクとして把握し、その上でコストとのバランスを十分にとれば、短期的にはアウトソース先に全て依存する方法も現実的に有効な選択肢でしょう。この方式であれば、データ管理についても、基本的にユーザー企業側では業務要件の洗い出しを行ったうえで、提供されるサービスのどれに当てはめるかを検討する、というものになります。
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