電話に出られない新人、それってスマホのせい?:女子ヘルプデスク今昔物語 第8話(2/3 ページ)
ヘルプデスクの実績を見込まれて(?)、電話応対研修を担当することになったわたし。1人1台電話を持っているこの世の中、「電話できない」という人はいないはず。そう思っていたのだけど……。
翌日。何とか板についてきたような“なんちゃって社内講師”として、電話応対の重要性や具体的な電話のかけ方、受け方などのレクチャーを行った。
午前中の前半はなんだかんだで座学が中心だ。ここまでは問題ない。休憩を挟んで、電話応対の演習を行うことにした。2人組になって、電話をかけてくるお客さまの役と、その電話を受ける役を決めて、30分ほど練習をさせる。その後、代表者に前に出てきてもらい、私をお客さまに見立てて、みんなの前で練習の成果を披露してもらうのだ。
まずは2人組の練習。みんな、レクチャーを受けた通りに(ギクシャクするのは仕方ないけれど)練習を重ねる。慣れてないのは仕方ない。でも、30分も練習を重ねると、それなりになってきたかしら。1人ずつ注意して見て回るほどの余裕が私になかったのだけれど、まぁ順調そうだ。
電話に出れない?
さて、練習も終わったし、代表者に出てきてもらおう。こんなときは、ここ数日で比較的目立っている、口数の多い(打たれ強そうな?)人にトップバッターをやってもらうに限る。最初から目をつけていたのは、体育会系っぽいMくん。
野球部かサッカー部で主将を務めていたっぽい(私の勝手な想像だけど)、何となくリーダー的な雰囲気をかもし出している人だ。指名すると、さすがに緊張しているようだけど、別に嫌がるようなそぶりも見せず、前に出てきてくれた。私の目に狂いはなかったかな?
わたし: じゃあ、私から電話をかけるから、練習した通りそれを受けてね。
本物の電話機を2台使った模擬演習だ(線は外してあるけれど)。私が電話をかけるふりをして、口で「リーン」と言う。正直、ちょっと恥ずかしい。
リーン。
リーン。
リーン。
わたし: 電話に出なさいよ(笑)
思わずツッコんでしまった。見た目とは裏腹に、とても緊張していたらしく、なかなか電話に出てくれなかったのだ。これが教室の笑いを誘い、Mくんの緊張感もちょっとほぐれたみたいだ。では、あらためて。
リーン。
Mくん: はい、●●株式がっ……えーと、●●かぶ……
3回目でやっと「●●株式会社です」と言えた。よほど緊張しているのかなぁ。
わたし: 私、△△商事の××と申しますが、吉田様はいらっしゃいますか?
Mくん: えーと、吉田はお帰りになられました。
わたし: (えー、敬語がおかしいよぉ)左様ですか。では、高橋様はいらっしゃいますか?
Mくん: はい、高橋のほうは今、席にいません。
わたし: (高橋の“ほう”?)ちょ、ちょっと待って――。
これはいったん中断だ。とはいえ、止めたもののどうするのか考えなしだった。新入社員たちの顔を見回しながら、疑問に思ったことを聞いてみる。
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