コレ1枚で分かる「人工知能研究の2つのアプローチ」:即席!3分で分かるITトレンド(2/2 ページ)
人工知能の開発について研究の歴史を整理していくと、「論理的思考の機械化」から「感覚的思考の機械化」へと変化してきたことが分かります。
「感覚的思考の機械化」させるアプローチ
2000年代に入り、さまざまな、そして膨大なデータがインターネット上に集まるようになりました。また、コンピュータの性能もかつてとは比べられないほどに性能を向上してきました。そこで、特定の業務や分野でのデータを解析し、その結果から分類や区別、判断や予測を行うための規則性やルールを見つけ出す手法「機械学習」が登場します。
「機械学習」以前は、先の説明の通り、人間がルールを記述して「論理的に思考」させようというアプローチが主流でした。しかし、「機械学習」はデータの相互の関係から規則性あるいはパターンを見つけ出そうというもので、「感覚的に思考」させようというアプローチといえるでしょう。
例えばある子どもが、その母親より父親に似ているとします。それを完璧に論理的に説明することは容易なことではありません。せいぜい、鼻の形がよく似ている、目元が似ている、笑顔がそっくりといった理由を付ける程度であり、「笑顔がそっくり」を論理的に説明することはできません。それでも、私たちはそれを瞬時に識別できるのは、特徴のパターンを感覚的に捉えることができるからです。これを機械にやらせようというのが、「機械学習」です。
「機械学習」の考え方は以前からありました。当時はコンピュータの性能が不十分でその能力を発揮するには至らなかったのですが、コンピュータの性能の向上と手法の進化とともに、その能力は高められてきました。
現在は、最新の脳科学の研究成果を取り入れ、感覚的思考の精度を高めようという機械学習のアプローチ「ディープラーニング(深層学習)」に注目が集まっています。この新たな取り組みは、これまでの人工知能の研究成果の限界をことごとく打ち破っています。そして、実用においても、これまでにない多くの成果をあげつつあります。
著者プロフィル:斎藤昌義
日本IBMで営業として大手電気・電子製造業の顧客を担当。1995年に日本IBMを退職し、次代のITビジネス開発と人材育成を支援するネットコマースを設立。代表取締役に就任し、現在に至る。詳しいプロフィルはこちら。最新テクノロジーやビジネスの動向をまとめたプレゼンテーションデータをロイヤルティーフリーで提供する「ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA」はこちら。
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