「敬語なんて必要ない!」な新人にパニック寸前?:女子ヘルプデスク今昔物語 第11話(2/3 ページ)
何となく消化不良の中始まった、コミュニケーション研修の二日目。ビジネスパーソンとして基本のコミュニケーションを教えていたら、新人からの意外な質問で大慌て。一体これはどうすれば……?
“心がこもっていない”敬語なんて必要ない!
これには2つのことで思考停止した。1つは、まさかこの時期に敬語の存在意義そのものに関する質問が飛んでくるとは思ってもみなかったこと、もう1つは、敬語の存在意義に疑問を呈しているその人自身が、なぜか敬語を使っているという矛盾。
わたし: ……えっと、どういう意味かしら?
パニック寸前の私。
新入社員D: 少し前から思っていたんですけど、別に敬語を使わなくても、ちゃんと気持ちがこもっていることのほうが大切じゃないですか?
わたし: ……というと??
私の脳みそはもう暴走しそうだ。頼むから止まらないでよ……。
新入社員D: えっと、言葉が多少なっていなくても、そこに相手を尊重する気持ちがこもっていることのほうが大切だと思うんです。喋り方とか雰囲気とかで、気持ちがこもっているかどうか分かるじゃないですか。気持ちがこもってない敬語って、かえって腹がたちませんか?
いかんいかん、これは完全にフリーズだ。脳みそを緊急再起動させなきゃ。えっと……。
わたし: まあ、言いたいことは分かる。
しまった。うっかり認めちゃったよ……。確かに彼の言うことも一理ある。焦ってヘルプデスクに電話をかけてくる人の中にも、言葉は丁寧だけど、明らかに怒りの感情が入っていたり、こちらに理不尽な要求を突きつけてきたりする人はいるもの。理不尽なことを言っているときの丁寧な言葉使いって、かえって不気味だし、威圧感もある。
でも「社内講師の人が敬語使わなくていいって言いましたー」なんて言われたら、私の立場がないじゃない。いや、これは言いたいことは分かると受け止めただけ。決して認めたわけじゃないのよ。あああ、まだパニック。落ち着け私。
わたし: えっとね。言いたいことは分かるんだけど……。みんなはどう思う? 気持ちがこもっていれば、敬語じゃなくてもいいと思う人手を挙げてみて。
ここはブーメランのようにみんなに聞いてみたのだが……ギャー。半数近くが手を挙げているではないか。むしろ、半分をちょっと超えているか?
わたし: じゃあ、気持ちがこもっていないけど、きれいな敬語がいいと思う人はどのくらいいる?
これは4、5人程度しか手が上がらなかった。
わたし: 手を上げない人はどっちつかず? 悩み中? 分からないのかな?
手が上がらない人からは、意見らしい意見が出てこない。意見がないのか、どう説明したらいいか分からないのか……そんな中、「気持ちがこもっていれば、敬語じゃなくてもいい派」の1人が口を開いた。
新入社員E: 敬語って、ワサビではないかと。
わたし: はい??
え、なに? パニックになっている私にワサビ? まさか、私の心の傷口にワサビを練りこもうってんじゃないでしょうね……ってそんなわけないか。
わたし: ワサビってどういうこと……?
関連記事
- やっぱりネコがうらやましい
ある寒い休日の朝、後輩からのヘルプコールでたたき起こされるわたし。ああ、我が家のネコは、まだぬくぬくと布団の中だというのに……。 - 第10話:新入社員の“コミュ力”、どう鍛えればいい?
「いいコミュニケーションってどんなもの?」を教える研修の時間がやってきた。個人的にコミュニケーションに正解はないと思っているんだけど、それでも教えなきゃいけない……。一体どう教えればいいんだろう? - 第3話:「報告書、スマホで書いてもいいですか?」
いよいよわたしが担当する新入社員研修が始まった。担当するのはMicrosoft Wordの使い方。新人もみんな使ったことがあるっていうし、楽勝楽勝……と思っていたのだけど、現実はそう甘くはなかったのだった。 - 第2話:今年の新人は「Windows 95」とほぼ同い年!
突然、新人研修で登壇することになってしまったわたし。どこから準備を始めよう……と悩んでいたら、何とも悲しい(?)事実に気付いてしまったのだった。 - 第1話:LINEで遅刻を連絡する新人、これはアリ? ナシ?
今年もウチの会社に新入社員がやってきた。LINEで遅刻の連絡するなんて時代が変わったわね――なんて思っていたら、彼らの研修で登壇することになってしまったのだった……。一体ヘルプデスクに何をやれっていうの?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.