OracleのエリソンCTO、IaaS注力でAWSに“宣戦布告”:Oracle OpenWorld 2016 Report(2/2 ページ)
クラウド分野へのシフトを進めるOracleは、SaaS/PaaS分野の事業が好調に推移していることから、今後はIaaSにも注力するという。ラリー・エリソン会長兼CTOは、「AWSより安く、性能と信頼で勝つ」と力説した。
「AWS優位の時代が終わる」とエリソン氏
エリソン氏によれば、同社がSaaS領域で多くの顧客企業獲得に成功し、PaaS領域でも成果を出していることから、クラウドへのシフトを進める当社にとって最後の成長領域となるのがIaaSだという。しかし、IaaS分野では既に多数のITベンダーが参入し、サービスメニューなども差別化が難しいことから、価格競争の様相を呈している。
エリソン氏は、後発として参入する上での強みがSaaS/PaaS事業の成功を支える同社のサービス提供インフラにあるとし、「高速のネットワーク・高可用性・耐障害性を兼ね備えた第2世代のITインフラを提供する」と述べた。
OracleのIaaSでは、可用性を高い複数のデータセンター群(同社は「ドメイン」と表現)で構成される「リージョン」を世界各地に配備。リージョン間を毎秒100ギガビット、遅延が100ミリ上未満という高速のネットワークで接続し、サービスを提供している。
これをベースに、エリソン氏は「AWSに比べて2倍以上の性能を20%安価に提供する。ストレージサービスのI/O性能は11.5倍だ」と力説。さらには、「これでAWS優位と言われる時代は終わりを告げるだろう」とも宣言した。
ベアメタルサービスやチャットボットも
エリソン氏の講演では、「IaaS注力宣言」が大きな注目を集めたが、SaaSやPaaSについても継続的な取り組みが多数紹介された。
SaaSでは、1000社以上が代表的なERPとHCM、CRMを併用しているといい、今事業年度はHCMやCRMのサービススイートをERPへ統合することで、企業における基幹業務の大半をSaaSで一元的に利用していく方針だという。また、2014年から提供する「エンタープライズパフォーマンス管理」(EPM)と呼ばれるサービスは1500社以上が既に導入。新メニューとして公共分野向けERPや損益管理、税務報告などを追加し、既存のサービスにモジュールのように組み入れて利用できる。
PaaS関連では、月額課金でOracleのハードウェア/ソフトウェア製品を利用できるベアメタルサービス「Cloud@Customer」を提供する。これまではオンプレミスもしくはPaaSサービスの利用だけだったが、Cloud@Customerはその間を補完するという位置付け。料金はPaaSサービスと同額になるという。当初はインフラ、ビッグデータ、Exadataの3つのメニューを用意する。
Databaseでは、現行版「12c」の最新となるRelease 2を提供する。Release 2ではマルチテナント対応を強化し、Release 1で最大253個だったプラガブル・データベースの管理を一気に4096個にまで引き上げている。2016年末までに、まずPaaSサービスやExdataマシンで順次利用できるようにしていくとしている。
また、CRM分野などで注目されているチャットボットの開発ツールをクラウドサービスで提供。開発ツールはモバイルライクなユーザーインタフェースを備え、ノンコーディングで顧客と対話するためのロジックを組み込めるという。これをエリソン氏がデモンストレーションし、チャットから名刺印刷を依頼すると、チャットボットが人事データベースを参照して実際の名刺デザインの画像を作成、確認を求める様子に来場者から歓声が上がった。
チャットで名刺を注文し、ロボットが自動的に人事情報を参照して名刺のイメージを提示する。エリソン氏のデモでは、現在のCTOではなく前職のCEOの肩書が提示され、エリソン氏が「更新しておいてよ」とお願いする場面も
エリソン氏は、「これからはミレニアム世代(10、20代の若者)がチャットボットのような新たなアプリケーションを駆使していく時代だ」と語り、業務アプリケーションへの新技術の積極的な採用を呼び掛けた。
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