「IT部門が関与しない予算のある企業が6割超」という現実に向き合う3つの視点:ITソリューション塾(2/2 ページ)
「IT部門が関与しない予算のある企業が6割超」という調査結果が出ている現実に、IT部門はどう向き合っていけばいいのか。役割を見直すためのヒントを紹介します。
新たな収益構造を築く3つの視点
ビジネスの回転率を上げる
人工知能や超高速開発ツール、PaaSやAPIを使ったサーバレス開発など、少ない工数で開発できる手段を生かし、短期間でビジネスニーズに対応できるシステムを開発、変更要求にも即応できるサービスを提供することです。そのためには、ツールの整備だけではなく、アジャイル開発やDevOpsの思想を前提とした仕事のやり方を採用することも不可欠です。
そうすれば、一つ一つの案件単価は下がっても回転率を高め、売上を拡大し、ノウハウの蓄積とツールの活用により効率を上げることで、利益も拡大できる可能性があります。さらに、これまでの請負契約にこだわらず、定額準委任や定額課金型の収益モデルへのシフトも合わせて模索する必要がありそうです。
バイモーダルでの事業展開
人間一人一人の生産性の限界に制約を受ける工数ビジネスでは、収益拡大は、いずれは頭打ちになります。この限界を突破する方法は、サービスビジネスの比重を高めるしかありません。しかし、既存のビジネスを一気にシフトさせることは現実的ではありません。
ガートナーは「バイモーダル」という言葉を使い、既存事業と新規事業を別事業体として分離混在させ、新規事業を育てつつ、その成長に応じて既存事業の人材をそちらに吸収していくことが現実的であるとしています。
業績評価基準や成長の加速度、リスクの意味が異なる新規事業を旧来のやり方に閉じ込めてしまうことは、事業の成長を妨げることになります。その意味でも、このようなやり方は現実的です。
高い専門性に特化する
「何でもできる、何でもやります」を止めることです。自分たちのこれまでの経験やノウハウの蓄積をさらに先鋭化させ、「〇〇なら弊社」と言い切れるメッセージを持つことです。
お客さまの選択肢は大きく広がっています。そういう中から自らの存在を強く訴求することに加え、その能力を先鋭化させることで存在を際立たせることです。先に紹介したバイモーダルな事業展開に際し、新規事業にこのような特徴を持たせることが大切になります。
ビジネス環境は加速度的に変化しています。加速度的に変化している市場は、小さな一歩が大きな差ととなります。既にでき上がってしまった大市場より、加速度的に成長する市場にいち早くアドレスし、新規事業を打ち立てることが大切であることは、まさにそのような意味もあるのです。そのためにも、テクノロジーやビジネスの動向を踏まえつつ、自らの専門性を再定義し、選択的資本投下をいち早く行うことです。
工数ビジネスはまだ稼げるという人がいます。まさに今その通りになっていますし、その事実を否定するつもりもありません。しかし、「稼働率は上がり、工数も稼げているが、利益が出ない、あるいは減っている」という現実に直面している企業も少なくないはずです。これは、もはや付加価値がなく、将来の成長が見込めない兆候と受け取るべきでしょう。ならば、稼げるうちに手を打っておかなければならないことは、いうまでもありません。
著者プロフィル:斎藤昌義
日本IBMで営業として大手電気・電子製造業の顧客を担当。1995年に日本IBMを退職し、次代のITビジネス開発と人材育成を支援するネットコマースを設立。代表取締役に就任し、現在に至る。詳しいプロフィルはこちら。最新テクノロジーやビジネスの動向をまとめたプレゼンテーションデータをロイヤルティーフリーで提供する「ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA」はこちら。
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