セキュリティ企業のCylanceは10月14日、マルウェア脅威の分析や対策関連情報などを提供する「脅威リサーチセンター」を東京都内に開設すると発表した。併せて同日から人工知能技術を利用するマルウェア対策サービス「Cylance Protect」日本語版の提供も始めた。
Cylanceは、10億件以上のファイルデータベースをもとに新種ファイルの構造を解析することマルウェアを検知・防御する次世代型のマルウェア対策技術を開発する企業。マルウェア検出に定義ファイルや振る舞い解析などの従来技術は使わず、機械学習や深層学習などの人工知能(AI)技術を利用しているのが特徴という。2016年8月に日本法人のCylance Japanを設立し、代表取締役社長に金城盛弘氏が就任した。10月には最高技術責任者(CTO)として乙部幸一朗氏も参画している。
金城氏は、これまでパロアルトネットワークスなどの日本法人設立時に社長職を歴任した経験がある。同日の記者会見では「Cylance日本法人設立からの2カ月は、これまで経験したことがないほどのペースで事業が拡大している」と所感を述べ、「日本市場向けに組織、製品、人材への投資を急ピッチで進めたい」と表明した。
乙部氏は、パロアルトネットワークスで技術責任者を務めるなど、ネットワークやセキュリティ分野のエキスパートとして知られる。CylanceのCTO就任については、「大学の卒業研究のテーマがAIだったこともあり、AIをセキュリティ分野へ応用していくことに大きな魅力を感じている」と話した。
新たに開設した脅威リサーチセンターは、米国以外では初の拠点といい、当初はマルウェア解析と侵入テスト技術を専門とするジェイソン・カーペンター氏ら2人体制で、日本の企業顧客向けに脅威分析や対策情報などを提供していくという。
同社は2016年に入って、日立ソリューションズやNECソリューションイノベータと代理店契約を締結したほか、エムオーテックスへの技術提供も行うなど日本市場での事業拡大を進めている。
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