三井化学が目指す、生産現場のAI活用とITインフラのカタチとは?(3/3 ページ)
ケミカル大手の三井化学は、NTTコミュニケーションズと共同で生産システムへのAI活用について検証に臨んでいる。AIを生かすためのITインフラの展望も含めた取り組みとは?
AIとIoT活用での課題
一方、実用化に向けた新たな課題も幾つか見つかった。例えば、AIやIoTの情報を活用するためのツールはプラント技術者が手軽に利用できる必要があり、また、データが示す結果が論理的に裏付けられる化学と工学の整合性が確保されていないと難しい。生産システムから得られるデータの変数は多くても数千程度とされ、“ビッグデータ”に比べると少ないことから、予測精度を高める方法が欠かせないという。
さらには、AIが生産システムの状況を予測した根拠をプラント技術者らが理解できるよう、こうした予測技術の“ブラックボックス化”を防ぐ必要があるという。そして、生産システムに搭載されるIoT機器や、情報をやり取りするネットワーク、IoTとつながる先の情報系システムを含めたセキュリティの確保も必須になるとしている。
十河氏によると、今回の検証ではこれらの課題の観点からもNTTコミュニケーションズと共同で実施した。同社単独で進めるのは難しく、さまざまなベンダーとの協働体制が重要だという。
例えば、ITインフラの観点で同社は、生産システムのデータをERPなどへ接続してデータを効率的に利用するために、情報システム系のネットワークと工場設備系のネットワークをセキュリティシステム経由で接続している。IoT化によってネットワーク接続される環境が広まると、マルウェアの侵入やサイバー攻撃の不正アクセスといった脅威の高まりが懸念されるものの、自社のIT担当者を工場の現場に配置するには限界があるという。
脅威の侵入を回避するにはネットワークを分離させる方法もあるが、IoTやAIを実際に活用していくには現実的な解決策といえないため、現在は情報システム系のネットワークと工場設備系のネットワークの再構築を含めたインフラの見直しなどについて検討している状況だとしている。
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