コレ1枚で分かる「イベントドリブン方式」:即席!3分で分かるITトレンド
「イベントドリブン方式」の特徴やメリットについて、対照的な「リクエストリプライ方式」と比較しながら解説します。前者は“指揮者とオーケストラ”、後者は“演劇や踊りの演技者”をイメージすると分かりやすいようです。
この連載は
カップめんを待つ間に、電車の待ち時間に、歯磨きしている間に“いまさら聞けない”ITトレンドが分かっちゃう! 今さら聞けないITの最新トレンドやビジネス戦略を、体系的に整理して分かりやすく解説する連載です。「この用語、案外、分かっているようで分かっていないかも」「IT用語を現場の社員にもっと分かりやすく説明できるようになりたい」――。情シスの皆さんのこんな課題を解決します。
ある業務で一連のサービス(特定の業務を処理するプログラム)を連結させて全体の処理を行う方式に、「オーケストレーション(Orchestration)」と「コレオグラフィ(Choreography)」があります。
前者は、指揮者の指示に従って各演奏者が担当する楽器を演奏するように、全体の処理の流れを制御する指揮者にあたるプログラムが存在し、そこからのリクエストによってサービスを実行し、実行結果を指揮者に返して処理を継続させる方式で、「リクエストリプライ方式」と呼ばれています。
各サービスは、そのサービスを制御する指揮者が受けもっている特定の処理のためだけに利用され、他の指揮者が制御する別の処理を引き受けて実行することはありません。そのため、処理が増えれば、指揮者のプログラムもその数必要となり、同時に多くのサービスが駆動されます。
一方、後者は、演劇や踊りで演技者にあらかじめ振り付けが行われるように、個々のサービスにあらかじめ動作条件や次にどのサービスを起動させるかといった設定が与えられており、それに従って、各サービスが自律的に動作する方式です。
この方式は、何らかのイベントの発生によって特定の業務処理サービスが駆動される場合が多く、「イベントドリブン方式」と呼ばれています。イベントには、「新規注文が入った」「商品が入庫した」「新規顧客が登録された」などがあります。
リクエストリプライ方式は、指揮者が関知できないタイミングで行われた処理や、予期できないタイミングで発生したイベントを検知して対応することは難しく、処理ができなかったりタイミングが遅れたりといったことが起こります。
一方、イベントドリブン方式では、イベントの発生時に次に続くサービスに即座に通知できますので、処理タイミングを遅らせることはありません。また、イベントが増えても、必要なサービスだけが起動されますので、システム資源の消費量は少なく、負荷の変動にも柔軟に対応できます。このサービスを先に紹介したマイクロサービスにしておけば、開発や運用を効率よく行うことができます。
著者プロフィル:斎藤昌義
日本IBMで営業として大手電気・電子製造業の顧客を担当。1995年に日本IBMを退職し、次代のITビジネス開発と人材育成を支援するネットコマースを設立。代表取締役に就任し、現在に至る。詳しいプロフィルはこちら。最新テクノロジーやビジネスの動向をまとめたプレゼンテーションデータをロイヤルティーフリーで提供する「ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA」はこちら。
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