コレ1枚で分かる「自動化から自律化への進化」:即席!3分で分かるITトレンド
人工知能の進化などでITは「自動化」から「自律化」へ向かっているといわれています。今後の変化を見据えるこの2つのキーワードについて、違いと進化のプロセスを整理しておきましょう。
この連載は
カップめんを待つ間に、電車の待ち時間に、歯磨きしている間に“いまさら聞けない”ITトレンドが分かっちゃう! 今さら聞けないITの最新トレンドやビジネス戦略を、体系的に整理して分かりやすく解説する連載です。「この用語、案外、分かっているようで分かっていないかも」「IT用語を現場の社員にもっと分かりやすく説明できるようになりたい」――。情シスの皆さんのこんな課題を解決します。
ITは、これまで、プログラムされたやり方をその通り確実にこなしてくれる“自動化(automatic)”への取り組みを進めてきました。しかし、人工知能の機能や性能が向上する中、自分で学習し、独自にルールを作り、仮説検証し、状況を把握して最適な方法を選択・判断して自ら実行する“自律化(autonomous)”を実現する取り組みも進んでいます。
例えば、目的地を指定すればドライバーが運転する必要のない自動車、配達先を指定すれば荷物を届けてくれる無人航空機、基本的な作業手順を教えれば自ら試行錯誤を繰り返して作業スキルを高めてく産業用ロボットなど、自律化の機能を備えた機械「スマートマシン」が続々登場しています。
自動化とは、人間が体験から仮説を立てて検証し、ルールを定義して実行させる仕組みです。その手順は、人間が経験から得た知見に基づいてアルゴリズム(問題を解決するための手順や計算の方式)を考案し、これに基づいてロジックを組み立て、人間がプログラムを作成します。そして、そのプログラムを実行させることで自動化が実現します。
もっと作業の効率を高めたい、品質を良くしたいとなると、どうすればそれができるかを人間が試行錯誤を重ね仮説を立て、プログラムを改善することで対応します。
このような自動化の仕組みを使うことで、さまざまなデータが蓄積されていきます。そのデータを分析することで、人間の経験や勘にだけ頼るのではなく、データの裏付けがある規則性やロジックを見つけ出せるようになります。そのロジックを人間がプログラムにして実行させることで、処理手順を洗練させたプログラムを作ることができます。
さらにデータを分析し、そこ潜む規則性や最適なロジックを自動で見つけ出す「機械学習」の技術を使うことで、機械は自ら処理の手順を改善し、能力を高めていくことができるようになります。これが自律化です。人間が仮説を立て、手順を作り、プログラムを作って、その通り実行させるのではなく、状況に応じて自ら判断して適応してくれるのです。
ITは今、「自動化から自律化へ」とステージを移そうとしています。その一方で、かつて自動化によって単純労働者の雇用が奪われたように、自律化はより高度な知的労働者の雇用をも奪うのではないかとの懸念の声も聞かれます。
しかし、ITが自動化から自律化を目指す流れにあらがうことはできません。ならばこの流れとうまく付き合っていく方法を考え、新たなビジネスの可能性を見いだしていく必要があるでしょう。
著者プロフィル:斎藤昌義
日本IBMで営業として大手電気・電子製造業の顧客を担当。1995年に日本IBMを退職し、次代のITビジネス開発と人材育成を支援するネットコマースを設立。代表取締役に就任し、現在に至る。詳しいプロフィルはこちら。最新テクノロジーやビジネスの動向をまとめたプレゼンテーションデータをロイヤルティーフリーで提供する「ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA」はこちら。
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