2017年のエンタープライズIT業界、気になる3つの動き:Weekly Memo(2/2 ページ)
2017年のエンタープライズIT業界はどうなるか。注目すべき動きについて、ベンダー各社トップの年頭所感を交えながら、筆者なりに予測してみたい。
[予測3]IoTを狙ったセキュリティ脅威が一層深刻になる
2017年はさまざまな分野でIoT(Internet of Things)の仕組みが活用されるようになるだろうが、それは同時にサイバー攻撃をはじめとしたセキュリティ脅威のリスクが増大することにほかならない。IoTが企業、さらには社会全体の情報基盤になっていくにつれ、被害に遭ったときの影響は大きくなり、社会混乱に陥る可能性もある。2017年は、そんな象徴的な出来事が起き得るだろう。IoTのセキュリティについては、トレンドマイクロの大三川彰彦副社長が年頭所感で次のように述べている。
「IoTの普及により、企業や組織は消費者の情報を取得することで、より個々の消費者にカスタマイズしたサービスを提供できるようになる。その一方で、ヘルスケアや決済の情報など、より重要性の高い情報を企業や組織が保有するため、これらが漏えいした際のリスクを踏まえたセキュリティ対策が求められる。企業や組織においては、従来の情報資産の守り方から発想を転換するセキュリティ戦略が必要になるだろう」
最近では、ますます手口が巧妙化して検知が難しくなったサイバー攻撃から法則性や特徴を見いだして攻撃者を特定し、素早く防御するセキュリティ技術の開発が進んでおり、これにAIを活用する取り組みも行われている。だが、AIは攻撃者も活用しており、近い将来はサイバー空間でAI同士の攻防戦が現実となる可能性が高まってきている。2017年はそんな動きを予感させるような出来事が起こりそうだ。
さて、2017年のエンタープライズIT業界について、現実的な観点から3つの動きを予測してみたが、最後に一言申し添えておきたいのは、2017年は何よりも世界の政治と経済の先行きが見えづらいことである。マスメディアでは、リスクはあれど楽観する見方が多いように見受けられるが、筆者はいい予感がしない。世界の景気動向に直結するだけに、筆者の予感が外れることを祈るばかりである。
関連記事
- 「Weekly Memo」記事一覧
- Microsoftのスマホ戦略に変化の兆し、2017年はどうなる?
「Lumia」シリーズに代わって、高スペックなビジネス向けハイエンドスマホ「HP Elite x3」を投入するなど、Microsoftのスマートフォン戦略に変化の兆しが見えている。 - 日本企業がAIで「攻める」年――IBM・与那嶺社長
多くの企業がAIに注目した2016年。AIがきっかけとなり、企業のIT投資が積極的になるとIBMのポール与那嶺社長はにらむ。日本企業が活躍できると信じている与那嶺氏が考える、ブレークスルーに必要なポイントとは? - デジタル改革で変わるべきはIT、そして人――日本マイクロソフト・平野社長
多くの企業がデジタル改革の必要性に気付き始めた2016年。クラウドファーストの製品や技術、ワークスタイル改革のノウハウでそれを支援するのが日本マイクロソフトだ。企業がデジタル改革を成功させるために欠かせない要素として、同社社長の平野氏が挙げたのは……。 - AIが生み出す安心を“東京2020 Ready”のレベルへ――NEC・新野社長
2016年、AI関連のソリューションを立て続けに発表したNEC。技術革新のスピードが高まっている今、実用化を念頭に置いた研究開発が重要になるという。2017年は、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会で実用に耐え得るレベルへと人工知能の技術を磨くことが1つの目標になるようだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.