VSANのメリットとデメリット:仮想化&ストレージの基礎と最前線(1/2 ページ)
VMwareのストレージ管理技術の1つ「VSAN(VMware Virtual SAN)」について解説します。仮想環境をスモールスタートする場合にも有力な選択肢となりうるストレージ機能です。
この記事は羽鳥正明氏のブログ「仮想化&ストレージの基礎と最前線」より転載、編集しています。
今回は、仮想化環境でのストレージ機能であるVSANについてご紹介します。
VSANとはVMware Virtual SANの略号で、Software-Defined Storageを実現するVMwareの最初の製品となったものです。
VSANの内容は、ハイパーバイザー統合型ストレージといわれるもので、ハイパーバイザーであるvSphere(ESXi)に、ストレージの機能を埋め込んだ商品と考えると理解しやすくなります。ハイパーバイザーをインストールしたx86サーバに内蔵されているHDDやフラッシュを抽象化することにより、単一のリソースプールし、高いパフォーマンスと耐障害性に優れた共有データストアを作成するのがこの商品の狙いとなっています。
共有ストレージを不要にするのが大きなメリット
VSANは、次のような特徴を持ちます。
- ローカルサーバに搭載されたディスクを利用した共有ストレージ(大容量安価な磁気ディスクと、高速低遅延なフラッシュデバイスを組み合わせたハイブリッド型の実現)
- ストレージポリシーによる管理(可用性やパフォーマンスを仮想ディスクの粒度で定義)
- 柔軟な拡張性(ホスト追加による動的なストレージ拡張により3から32ノードまでサポート)
一般的に、仮想化基盤を構築しようとする際は大きなコスト負担となる共有ストレージを導入することが必須とされてしまうものですが、VSANを導入すれば、そうした共有ストレージを導入する必要がなくなります。
VSANによって、その代わりに各ホストサーバに内蔵されているSSDやHDDなどのローカルなディスクを仮想的に束ね、単一の統合データストアとして運用できるようになるのです。
従って、単純にホストサーバを増設するだけで簡単に共有ストレージの容量やI/O性能を拡張できるのが大きなメリットとなります。業界標準の低コストなサーバコンポーネントに展開できることから多額の初期投資が不要であることは、多くの利用者に門戸を開くものになっているといえます。
独立した専用ハードウェアを必要とすることなく、仮想マシン中心のポリシーによってストレージサービスレベルの監視を自動化しているという点も非常に魅力的な中身といえます。
また仮想サーバのデータは、ポリシーに従い、2台以上のホストサーバのローカルディスクに冗長化されて保存されることになります。万一、いずれかのホストサーバに障害が発生した場合でも、データは保護されるため、運用に支障は生じないのも安心して利用できる大きなポイントとなっています。
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