VSANのメリットとデメリット:仮想化&ストレージの基礎と最前線(2/2 ページ)
VMwareのストレージ管理技術の1つ「VSAN(VMware Virtual SAN)」について解説します。仮想環境をスモールスタートする場合にも有力な選択肢となりうるストレージ機能です。
SSDとHDDの特性に合わせた運用設定が可能
VSANは、ホストサーバに内蔵されている高速なSSDを効果的に活用することで、仮想的な統合データストアのI/O性能をさらに高めることが可能です。全ての書き込みデータをいったんSSDに蓄えた後、余力時間を使ってHDDに移します。
また、読み出しデータについても、SSDをキャッシュとして利用することができるのです。仮想化基盤を一元管理するVMware vCenterを利用すれば、各ホストサーバに内蔵されている任意のSSDおよびHDDに対して利用割り当ての設定を行い、ポリシーに基づいた統合データストアの運用を実現します。
初期設定では、SSDの30%をデータ書き込み用のバッファに利用し、70%をデータ読み出し用のキャッシュとして使用できるようになっていますので、必要に応じてこの割合を変更することも可能です。
応用事例も多数登場
VSANを活用することで、共有ストレージを用いた場合と同等もしくはそれ以上に、利便性の高い仮想化基盤を構築・運用することが可能です。
具体的な応用事例としては、仮想デスクトップを構築することができるので、社内に分散しているクライアントPCを仮想化し、ホストサーバ側で集中管理を行うことにより運用コストの低減やセキュリティ強化の実現や、開発環境を提供することが可能です。
システム構築プロジェクトの作業負荷の変動に合わせ、必要な数の仮想サーバを動的に立ち上げたり、リソースを拡張したりできますので、シンプルでスケールアウトを簡単に実現でき、しかもTCOの削減に寄与することができるようになるのです。
さらにBCP対策で待機系システムのための仮想化基盤をシンプルで低コストに実現でき、リカバリー先を安価に構築することもできます。
実際に利用してみるとデメリットは少ない
完璧な共有ストレージを購入して設定することができれば、パフォーマンス的にVSANを上回る可能性はもちろんありますので、それと比較すればデメリットは全くないとはいえませんが、あまり費用をかけずに仮想化基盤を構築できるという点では、ローカルディスクを仮想的に束ねて利用できるVSANの仕組みはかなり満足度の高いものということができそうです。
VSANは登場してから一定の時間も経過しており、多くの顧客が実際に使ってみてその利便性を実感しています。特に、立ち上がりで大きな投資コストを要求されないことは仮想化利用を非常にスムーズにする役割を果たしており、細かな改善はバージョンアップごとに実現されているようですが、おおむね評判のいいことがいえそうです。
VSANをいきなり大規模な仮想環境に導入するには入念な事前検証を行うべきだと考えますが、新たに仮想環境をスモールスタートするのであれば、1つの有力な選択肢であることには間違いありません。
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