ビッグデータで株式投資はどう変わる? カブドットコムの先進事例:API公開からAI活用まで(1/3 ページ)
社長が自らデータに触れて、データの分析や活用を進めるカブドットコム証券。同社代表執行役社長の齋藤正勝氏が日本データマネジメント・コンソーシアムが主催するユーザー会で、データ活用の取り組みについて講演を行った。
「Fintech」という言葉に代表されるように、昨今、金融業界でのビッグデータ活用に注目が集まっている。データ分析で未来を予測し、次の一手をどう打つか……三菱UFJフィナンシャル・グループのネット証券、カブドットコム証券もそのような取り組みを行っている企業の1つだ。
社長が自らデータに触れ、データの分析や活用を進める同社だが、どのような課題を感じ、どのようなシステムを構築しているのか。日本データマネジメント・コンソーシアム(JDMC)のユーザー会で、同社代表執行役社長の齋藤正勝氏が講演を行った。本記事ではその講演の様子をお届けしよう。
カブドットコムはデータ活用にどう取り組んでいる?
カブドットコム証券がビッグデータのプロジェクトを始めたのは約2年前。システム部門やマーケティング部門のミッションとしたり、データサイエンティストを育成したりといった本格的なものではなく、「データサイエンティスト的な人を無理やり社内から集めて始めた」(齋藤氏)ものだったという。それぞれの部署が業務の課題を抱えていたこともあり、プロジェクトは動き出したそうだ。
同社では、主に“予測”のためにデータ分析を行っているという。株式を取り扱っているため、明日の株価や米国大統領選の結果によって、金融商品はどのような影響を受けるか、という予想が業務に大きく影響するからだ。「当社はかっこよく言えば予測産業のようなものです。終わったことを振り返ることも重要ですが、予想することが文化として根付いているところは弊社の特長ですね」(齋藤氏)
システム面も一般的な企業や銀行とは、異なる傾向があるという。「秒間2000トランザクション、そして同時セッション数も10万近くまで増える日がある」と齋藤氏は話す。マーケットが開く午前9時などのイベントに合わせて瞬間的にアクセスが伸びる一方で、アクセスが非常に少ない時間帯もあるそうだ。
「当社では、ミリセック(1000分の1秒)やナノセック(10億分の1秒)という言葉が飛び交っています。1秒でも遅れたりダウンしたりすると、もう情報の価値がなくなってしまうビジネスなのです。実際に当社では、注文の執行が1秒以上遅れたら手数料を無料にするサービスもやっており、非常にシビアなシステムにしています」(齋藤氏)
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