「失敗のリスクばかりを探し、現場のやる気を削ぐ人」にならないために:ITソリューション塾(2/2 ページ)
世の中には、「失敗のリスクを挙げ連ねて『すべきことを葬る』輩」が存在します。そんな「イノベーションの壁」にならないために持つべき「5つの視点」を紹介します。
3.「『お金を出してでも手に入れたい・使いたい』と顧客が思える根拠は何ですか?」
自分ではできない。あるいは、膨大なコストや時間がかかる。しかし、お金を払えばあっという間に解決してしまう。しかも妥当な金額でできるとすれば、お金を払ってでも手に入れたいと思うはずです。
- 1人で3日かかることだけど、100万円払えばやってもらえる。
- この仕事の効率は3%アップするが、他の仕事が倍になる。
- 必要性が明確なシステムを売上10億円の企業に2億円で提供する。
これでは、「お金を払ってでも」とは思いません。
いくらだったら払えるのかを明らかにし、その根拠を論理的に証明できることです。それがなければ、その企画や提案がどれほど「よくできた」内容でも、ビジネスにはできないでしょう。
4.「他社にはできない、自分たちの『特別』は何ですか?」
- 他社にはすぐにまねができない、自分たちならではの「特別」はあるか?
- 特許で守られている。
- 膨大な設備投資が必要で、対応には相当の時間がかかる。
- それをやるために必須の有資格者を相当人数抱えている。
こういう明確な「特別」があれば、ビジネスの決め手になるでしょう。
- 同じサービス内容でコストは半額。
- この業界では長年の実績があり、圧倒的な信頼がある。
- 長年のノウハウの蓄積がある。
AIやクラウドに代替される可能性はありそうですが、いち早くスタートを切ることで、一定期間の「特別」を担保できるかもしれません。
AWS(アマゾン ウェブ サービス)が魅力的であるのは、コストではありません。他の追従を許さないサービスの品ぞろえと、その優位を維持し続けるために新しいサービスを提供し続ける、圧倒的な頻度とスピードが、彼らの「特別」となっています。
何が自分たちの絶対的な「特別」なのか――。それを明確にすることです。
5.「実現するための課題は何ですか?」
「自分たちに何ができるだろうか」を考え、「それを使って何かできることをやろう」という発想は、失敗の王道です。なぜなら、顧客は自分の「困った」を解決してもらいたいのであって、あなたの「できることの提供」を求めているわけではないからです。
「顧客の課題を解決するためにすべきことは何か」を明らかにすることです。すべきことを実現するためには、自分たちに「できること」もあれば、「できないこと」もあるでしょう。「できること」に悩む必要はありません。「できないこと」は何かをはっきりさせ、それを解決し、「できること」と組み合わせることができてはじめて、「すべきこと」が実現するのです。
ここでいう「課題」とは、「すべきこと」が実現するために解決すべきこととなります。これを明確にし、その課題を解決するための方策を考えることが、ビジネスを成功させる筋道です。
失敗のリスク挙げ連ねて「すべきこと」を葬るのではなく、どうすればできるかを分析的に捉え、その実現に向けた知恵を絞ること。
そんな視点で、事業戦略や新規ビジネス、顧客への提案において、考え、議論してみてはいかがでしょうか。
著者プロフィル:斎藤昌義
日本IBMで営業として大手電気・電子製造業の顧客を担当。1995年に日本IBMを退職し、次代のITビジネス開発と人材育成を支援するネットコマースを設立。代表取締役に就任し、現在に至る。詳しいプロフィルはこちら。最新テクノロジーやビジネスの動向をまとめたプレゼンテーションデータをロイヤルティーフリーで提供する「ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA」はこちら。
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