NECとの提携に見る、Oracleのクラウドサービス新戦略:Weekly Memo(2/2 ページ)
NECと日本オラクルが発表したクラウド分野の提携は、Oracleにとってクラウドサービスの新たな普及戦略を本格的にスタートさせたことを意味している。
Oracleが挑む統合型システムによるクラウドサービス展開
Oracleの新たな戦略とは何か。それは、今回のNECとの提携にも見られるように、Oracleのクラウドサービスをパートナー企業のデータセンターから提供する仕組みを広げていくことだ。それを実現するのが、Oracle Cloud at Customerである。
Oracle Cloud at Customerは、ハードウェア、ソフトウェア、クラウド管理、サポート、IaaSを月額課金で提供するとともに、OracleのデータベースやJava開発環境などをPaaSとして定額または従量課金で提供するサービスである。
その提供形態は、2016年春にOracleが市場投入した「Oracle Cloud Machine」に代表される統合型システム製品だが、中身はOracle Cloudとの完全互換性を備え、Oracleが自らの資産として運用管理を行うパブリッククラウドサービスである。
実は、既存のパブリッククラウドと同等の機能を持たせた統合型システムとしては、Microsoftが提供する「Microsoft Azure Stack」を組み込んだ製品を複数のサーバベンダーが手掛けている。
Microsoftの戦略として見れば、Oracleと同様、オンプレミスや他のクラウドサービスとのハイブリッド利用のニーズに対応したものだが、Azure Stackマシンはユーザー企業が購入して利用するのが前提となっている。目的は同じでも、Microsoftは製品なのに対し、Oracleはサービスとして提供しているわけだ。どちらの戦略が奏効するか、今後の行方が興味深いところである。
石積氏によると、Oracle Cloud at Customerの顧客企業への国内導入実績は既に数社あり、2016年10月にはNTTデータが今後のサービス展開を踏まえてまずは自社の開発環境向けに導入したが、ビジネスパートナーとして一次保守も合わせて本格的に協業するのは、今回のNECが初めてとなる。
Oracleでは石積氏が語ったように、NECが持つ全国カバレッジの展開力に大きな期待を寄せている。それというのも、図2に示したNECの全国販売・サポート網において、地域のデータセンターにもOracle Cloud at Customerを展開できる可能性があるからだ。その意味では、OracleにとってNECとの提携は新たな戦略を凝縮したものともいえそうだ。
ちなみに、Oracleは2016年7月に富士通とクラウド分野で提携した。両社の協業もOracleのクラウドサービスを富士通の国内データセンターから提供するものだが、こちらはOracleにとって実質的に日本で自らのデータセンター拠点を設けたとの意味合いがあり、米Oracleが富士通と提携した形となっている。さらに今後の海外展開を見据えた協業とも見て取れる。
それぞれの提携内容に違いはあるものの、国内でクラウドサービスの普及拡大を図る日本オラクルにとっては、富士通、NTTデータ、そしてNECと、強力なパートナーシップを得た形になった。さらに今後、Oracle Cloud at Customerを既存のパートナー企業に幅広く扱ってもらえるように尽力していく構えだ。Oracleならではのユニークな新戦略の行方に注目しておきたい。
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