神田の居酒屋にロボットが来た日――“飲みニケーションロボット”の作り方:【総力特集】人とAIの共存で進化する「おもてなし」(3/4 ページ)
東京・神田の居酒屋「くろきん」に卓上型コミュニケーションロボット「Sota」が登場。飲み会を盛り上げる仕掛けとして、同店の来店者増に一役買っているという。居酒屋にロボット、このプロジェクトはどのようにして始まったのか。その裏側に迫った。
場所が居酒屋ということで、ターゲットはビジネスパーソン。開発者自身が、自分たちが飲みに行ったときにどんな会話ができると面白いかを徹底的に考えたという。
「Pepperの案件では、新規のお客さまに対する案内役というシーンが多いですが、今回はロボットが2〜3時間ずっとそばにいることになる。そうなると、会話が楽しめる必要があります。じゃあ、会話ってどう楽しむのか? と掘り下げていきました」(ヘッドウォータース マーケティング推進室 室長の依光薫平さん)
その入り口は“共感”。「やはり、仕事で疲れたビジネスパーソンは誰かに褒めてもらいたいし、認めてもらいたい」(依光さん)。そこからコメントを考え、「ダメだし」「店員さんと絡む」とリストを増やしていった。
開発当初は、長い文章の方が面白いだろうと考えていたが、テストをしてみると使いづらいことが分かった。利用シーンが限られるうえ、Sotaが話し始めると人は会話を止めて聞いてしまう。飲み会においては、会話の流れを邪魔しないことが重要で「へえ〜」「分かるー」「うんうん」「いいね」といった、短い相づちを追加していったそうだ。
入力に時間がかかるフリートークは、自ら会話を始めるときに使われることが多い。「部長、それセクハラですよ」など普段は言いにくいことも、ロボットを介して話させれば笑い話になる。「飲み会の後半になると、皆一生懸命になってSotaに何を話させるか考えるようになるんです」(依光さん)
利用者が楽しめるシナリオ作りが開発のカギ
高度なテクノロジーを使うわけではなく、ユーザーがどう楽しめるかをベースにサービスを作り込む。今回は特にUX(ユーザーエクスペリエンス=顧客体験)の設計にこだわっているそうだ。
「ロボットアプリを作るときには、演出や企画が生み出す感覚と、テクノロジーが生み出す感覚の両方を意識しています。テクノロジーは驚きや『すごい』という感覚を生んでくれますが、それは長くは続きません。長く使ってもらうには、企画や演出、そしてロボット自体が生み出す価値を大事にしないといけません」(塩澤さん)
今回のプロジェクトでは、テクノロジーよりも、アプリを使ったシナリオの演出や企画で生まれるアナログ的な楽しさを優先している。例えば「自然言語で認識して、ロボットが返事をします」といっても、いつ話しかけるのか、何を話しかけるのかが分からなければ、誰も使わずに終わってしまうだろう。
人間がロボットと接するシナリオ、そしてそれが伝わる表現を大事にする。居酒屋によく来るグループ客が、ロボットに馴染めるにはどうすればいいか。ロボット導入が進むカギとなるのは、技術の進歩だけではないのだ。コミュニケーションロボットが目指す先が、受付などで一瞬だけ接するだけではなく、人間の生活に入りこむこと(あるいは共存)であれば、この視点がますます重要になる。
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