神田の居酒屋にロボットが来た日――“飲みニケーションロボット”の作り方:【総力特集】人とAIの共存で進化する「おもてなし」(4/4 ページ)
東京・神田の居酒屋「くろきん」に卓上型コミュニケーションロボット「Sota」が登場。飲み会を盛り上げる仕掛けとして、同店の来店者増に一役買っているという。居酒屋にロボット、このプロジェクトはどのようにして始まったのか。その裏側に迫った。
くろきんでは今後、個人のスマートフォンでSotaを使えるようにしたり、事前に来店者の情報を登録できるようにしたりするなど、アプリの機能拡張を検討している。このほか、Sotaを追加で設置したり、シャープのロボット型携帯電話「RoBoHoN(ロボホン)」の導入も検討しているそうだ。
業務用コミュニケーションロボットは、CRMの用途で利用されるのが現在の主流だが、Sotaに組み込むことについては、ゲイトとヘッドウォータースともに慎重だ。「技術的には可能だが、現段階で出しているメリットを失わずにどこまで機能を盛り込めるかが、次に目指す課題になる」という。
ロボットが好きな食べ物を覚えてくれたり、商品をオススメしてくれたり――ロボットシステムのCRM活用が大きな可能性を秘めているのは確かだが、自分たちのビジネスと目的に本当に沿うものなのかを検証する必要があるだろう。
機能とニーズ、ロボットはどちらを重視すべきか?
今、世の中に出ているコミュニケーションロボットの多くは、高機能なロボットが人間の代わりに、ユーザーの目的を達成するというシナリオを描いているものが多い。しかし、ニーズをベースにしたUXを追求することで、ユーザーが自由にロボットを使い、自身の目的を達成することができるのではないか? 今回のプロジェクトはその可能性を示している。
はっきり言ってしまえば、現段階ではスマートフォンをロボットのリモコンにしているにすぎず、技術的な驚きは少ない。しかし、これが人工知能による発話になった瞬間、ロボットが変なことを言い出して場が凍ったり、話の流れを変えてしまうというリスクが生まれる。
高度な技術を使えば、サービスを使う側も提供する側もリスクを負うことになり、導入に必要な時間やコストが増えるだろう。今回のSotaは導入しやすく、利用者に受け入れやすい、「現実ベースですぐに使えるロボット」を目指したといえる。企業導入という面では、今はこちらの方が受け入れられやすいはずだ。
もちろん、「鉄腕アトム」や「ドラえもん」のような自律型のロボットを目指す研究など、さまざまな機能を開発する動きも必要だ。理想を目指すことと、実際にユーザーに使われるためにできること、ロボットや人工知能の普及には、両方のアプローチが求められるのだろう。
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