HoloLensで日本企業はどう変わる? 自民党のIT戦略特命委員長が体験:Microsoft Focus(2/2 ページ)
ヘッドマウントディスプレイ型デバイスを装着すると、現実空間に3Dの物体が浮かび上がり、つまんだり動かしたり、中を見たり、操作したりできる――。そんなマイクロソフトの「HoloLens」を体験した議員たちの感想は?
中小企業への活用の可能性は?
HoloLens体験にあたり、まずは日本マイクロソフトがHoloLensの概要を説明した。
HoloLensは、2015年1月に発表され、2016年3月に米国、カナダで販売を開始。2016年12月2日から日本でも予約受付が開始され、2017年1月18日に出荷が開始された。PCなどを接続することなく利用可能な独立型のデバイスで、実空間上にコンピュータが描くバーチャルの映像を重ねて表示できる。デバイスは高度なセンサーや透明なレンズ、空間音響システム、HPU(Holographic Processing Unit)と呼ぶカスタムチップなどで構成されている。
説明を受けた平井議員が特に関心を寄せたのは、中小企業の導入に適しているかどうかという点だった。
政府では中小企業を対象に、ITを使った生産性向上を推進する目的で、ソフトウェアを中心とするIT導入費用を補助する「サービス等生産性向上IT導入支援事業(IT導入補助金)」を2016年度第2次補正予算で成立させた。2017年2月末で申し込みは終了したが、2017年度の概算要求の中にも盛り込まれ、6月まで利用できることになったため、この制度をHoloLensに適用できるかどうかが平井議員の関心事の1つだったのだ。
日本マイクロソフトでは、HoloLensは建設業や製造業、医療・ヘルスケア分野などで活用できることを示しながら、パートナー企業を通じて対応ソフトウェアを開発できる環境が日本でも整い始めていることを説明したが、平井議員は中小企業が導入するのは現実的に難しいと判断。その理由は、現在、開発者向けに提供されているHoloLensの価格が33万円からとなっていること、汎用的に利用できるアプリケーションはまだ用意されていないことなどだ。
日本マイクロソフトの三上業務執行役員は「将来は、より低価格で購入できるようにし、さらなる軽量化を図ることも目指している。中小企業にも購入しやすいデバイスへと進化する」と説明した。
そしていよいよ一行は部屋を移動し、3議員がそれぞれ15分ずつ実際にHoloLensを体験。実際には何もない棚の上にバーチャルでさまざまな物体が表示される様子を見たり、歩み寄って壁を突き破ると機内の様子が見える飛行機の模型を操作したり、仮想空間上の「Skype」で音声チャットを試したりした。
中でも面白いのが人体模型だ。リアルの空間上に浮かび上がる人体模型をのぞき込むように見ると心臓の中身を見ることができ、静脈や動脈の動きなどもつぶさに観察できる。議員たちは何度も、「おおっ!」という声をあげ、そのリアルさに驚いていた。
体験を終えた平井議員は、「VRとは異なるMRの可能性を実感できた。リアル世界を見ながら利用できるためか、“酔う”こともなく、疲れることもない。ただ、例えばもう少し軽くなるといいといったように、まだ進化の必要があるとも感じた」と感想を述べた。
HoloLensを体験できる場所はまだ限られているため、現状、MRのメリットを実感するのは難しい面もある。日本マイクロソフトは今後、本社体験エリアの拡充などによって、より多くの人が体験できる場を作っていく計画だ。
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