IT投資、どうすれば経営陣を説得できる? 日本IBMのCTOに聞いてみた(1/3 ページ)
新聞でもAIやFintechといったキーワードが毎日のように取り上げられている今、ITトレンドに興味を持つ企業の経営者が増えつつある。「何か新しいビジネスができないか」と考える“経営陣”に正しくITを伝える重要性は増しているという。
AIやIoT、Fintechなど、ビジネスに直結するITトレンドに注目が集まる昨今、自社で新たにITを活用できないか検討する、企業の経営者が増えつつある。こうしたトレンドに乗らないと「国内だけでなくグローバルの競争に遅れてしまう」と焦る企業も少なくないのではないだろうか。
とはいえ、AIで何か新しい取り組みができないか? といった漫然とした考えだけではプロジェクトは進まない。トップダウンで物事を進めるにも、経営陣が正しいITの知識を持っていることが不可欠だ。
経営とITをつなぐ架け橋を――。日本IBMでは2017年1月にCTO(Chief Technology Officer)を新設し、初代CTOに久世和資氏が就任した。IT投資のメリットはどうすれば経営陣に“響く”のか。同氏にビジネスとITを結ぶコミュニケーションについて聞いた。
日本IBMがCTOを新設した理由
――1月にCTOに就任したとのことですが、以前はどのような役職だったのですか?
久世氏: 2009年から8年ほど、日本IBMの研究開発全体をリードする立場にいました。日本には基礎研究所と製品の開発研究所という2つの研究拠点があるのですが、IBMがハードウェアからソフト、サービスにシフトしていく中で、日本の研究所は縮小を余儀なくされる状況だったんです。
しかし、その中でも、クライアントや市場と共に研究開発を進めているという日本ならではの強みを生かし、サウジアラビアの国全体の医療費を削減するプロジェクトなど、新興国における市場開拓を行っていました。
最近ではAIの「Watson」に関する研究がホットですね。Watsonのコアである自然言語解析には、日本の基礎研究所で開発した技術が生きています(関連記事)。特にテキストマイニングについては、日本が中心になって研究を進めているんですよ。他にも知識を管理する「Watson knowledge Studio」や医療クラウド「Watson Health Cloud」、自動車用のIoTプラットフォームなども開発しています。
――日本IBMが今CTOを新設したのには、どのような狙いがあるのでしょうか。
久世氏: IBMで言う「CTO」というのは、各事業部で展開しているソリューションや技術と市場(クライアント)を、自社以外の技術や製品も含めた上でどうつなぐかを包括的にリードしていく役割です。今までアジア・パシフィックといった単位ではCTOがいたのですが、日本独自でCTOを正式に置くのは初となります。
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