メガベンダー同士も協業、クラウドは新たなステージへ:Weekly Memo(2/2 ページ)
NTTコミュニケーションズと日本マイクロソフトがクラウド事業での協業を発表した。この協業から、クラウド市場が新たなステージに向かっていることがうかがえる。
注目されるハイブリッドクラウドとPaaSの動き
両社のクラウドサービスは、いずれもグローバルに展開している「メガクラウドサービス」といわれるが、Azureがパブリッククラウドサービスなのに対し、Enterprise Cloudはホステッドプライベートクラウドサービスを中心に提供(関連記事)していることから、お互いの強みを合わせてビジネス拡大を図ろうと協業に至ったようだ。
ただ、パブリッククラウドサービスとホステッドプライベートクラウドサービスの組み合わせという意味では、Azureは既に大手システムインテグレーターなどが展開するサービスと連携しているので目新しさはないが、NTT Comがメガクラウドサービスベンダーである点と、さらに踏み込んだ協業内容に見て取れる点が印象的だ。
本来ならば、大々的に記者会見を開いてもおかしくない両社の協業発表だが、市場のニーズが柔軟なハイブリッドクラウド基盤サービスにあるとするならば、あまり特定の関係を強調するのは、これからは得策でないのかもしれない。また、両社の協業については、NTT Comにとって日本マイクロソフトが契約相手なので、当面、日本国内での活動が中心とみられる。とすると、次にもっと大きなグローバルレベルの協業の可能性があるのかもしれない。
いずれにしても、今回のメガクラウドサービスベンダー同士の協業で見えてきたのは、市場のニーズがハイブリッドクラウドにあるということである。この傾向は既に見られつつあるが、難しいのはその先の読みだ。オンプレミスがホステッドプライベートクラウドへ移行する動きは加速するだろうが、その先はどうなるか。筆者がさまざまな取材から得た感触では、パブリッククラウドがあってこそのハイブリッドクラウドだという印象が強いが、さてどうか……。
少々話が先走ったが、今後、クラウド市場が向かう新たなステージとしては、ハイブリッドクラウド基盤サービスが挙げられよう。そして、もう1つ挙げておきたいのは、今回の両社の協業内容にも含まれているPaaSの存在だ。
調査会社のアイ・ティ・アール(ITR)が先頃発表した国内のPaaS市場規模推移によると、2015年から2020年度までの年平均成長率は43.9%。2020年度には2016年度の725億円に対して3倍以上の2548億円になると予測されている有望市場だ。同社は「今後、PaaSはイノベーションを推進するシステムを迅速かつ低リスクで構築する手法の1つとして一段と注目を集める」との見方を示している。(図2参照)
筆者の予測では、PaaSが先々ハイブリッドクラウド基盤サービスからパブリッククラウド基盤サービスへの移行を促す“橋渡し役”になるのではないかと見ている。オンプレミスからハイブリッド、そしてPaaSを軸にパブリックへという流れは、何かの動きをきっかけに急速に加速する気がしてならない。今回の両社の協業は、そうした流れの節目の1つになるような気がする。
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