デジタル変革に追い付くための、ITモダナイゼーションの「あるべき姿」とは?:ITmedia エンタープライズ ソリューションセミナー レポート(2/4 ページ)
レガシーシステムのマイグレーションによる、いわゆる「現代化」は競争力を高めるうえで武器となる半面、実践にあたっては厄介な課題も存在する。現代化に向けた最新動向と、課題解決を支援する取り組みとは。
カブドットコムが描く「AI×ビッグデータ」の近未来
特別講演では、カブドットコム証券の取締役 代表執行役社長を務める齋藤正勝氏が、ビッグデータ活用に向けた同社のシステム現代化の取り組みと、具体的な分析方法などを紹介した。
Web専業の証券会社として、同社が扱うデータ量は膨大だ。株式注文の件数だけでも1日あたり20万件。発注機能に加え、幅広い投資情報を網羅した自社開発の高機能・高速トレーディングツール「Kabuステーション」でのデータ処理件数も1日あたり12億件に上る。それらのデータを基に、同社ではIRの観点から、約定処理の実績やサポートセンターへの入電状況、顧客の投資成績を月次で公開してきた。
そのために同社では、分析作業の都度、システム部門にデータの抽出を依頼し、Excelなどで集計を実施していたが、「リアルタイムでの対応が必要とされる当社の現場に、合致しなくなってきた」と齋藤氏は振り返る。
そこで、同氏の肝いりで立ち上げたのが新DWH基盤の構築プロジェクトだ。さまざまな製品を検討する中で、最終的に選んだのは、DWH基盤の「Vertica」とBIツールの「Tableau」だった。
Verticaを選んだ理由はパフォーマンスの高さだという。日付ごとの各種サマリーの取得時間について、従来2億件のテーブルの処理に106秒を要していたが、導入後は204ミリ秒にまで短縮した。データの圧縮機能も備え、ディスクサイズ7分の1にまで削減している。一方で、BIツールにTableauを選んだ理由は、「分析者のイマジネーションを喚起する洗練された使い勝手にある」と齋藤氏。
「各種グラフの内容に疑問が沸いた場合、Tableauならばその場所をクリックして、その理由を簡単に深掘りできます。経営会議などで配布していたExcelの資料を、Tableauの画面に置き換えることで、意思決定を格段に短縮できると判断しました。また、その扱いやすさから全社展開も容易だと考えたのです」(齋藤氏)
プロジェクトは大きな成果を上げている。IT部門に依頼することなく必要なデータを入手できるようになった結果、現場部門では取引動向をリアルタイムに把握し、さまざまな対策を打てるようになった。例えば、午前中に損益が確定した投資家に対し、午後から迅速なフォローを行うといった施策が実現している。
その先に同社が見据えるのが、ビッグデータとAIを活用した、従来の金融機関とは一線を画す情報活用だ。
「ビッグデータとAIを組み合わせれば、顧客の売買傾向からAIが自動的に助言したり、投資先の時価総額に関するレポートを適時、送ったりといったことも可能です。つまり、AIが人の活動をきめ細かくサポートすることで、より高い顧客満足度の実現が可能になるわけです」と可能性の大きさを強調し、齋藤氏は講演を締めくくった。
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