ブロックチェーンが金融業界以外でも注目される理由:ビッグデータ利活用と問題解決のいま(44)(2/3 ページ)
金融取引の仕組みを大きく変えるとして注目される「ブロックチェーン」。しかしこの技術は、業種や業界の枠を超えたビッグデータを支える、共通基盤ソリューションとしても期待されている。その理由と世界各国の最近の動きをまとめた。
ブロックチェーンの国際標準化に向けた動きが本格化
各国の金融当局は、投資家保護やアンチマネーロンダリングなどの観点から、仮想通貨としてのビットコインに関連するルール作りを進めてきたが、基盤技術としてのブロックチェーンに関する、世界共通の定義や用語集は存在しないのが現状だ。
しかし、最近では国際標準化に向けた動きが各国で本格化してきている。例えば、オーストラリアの標準化団体であるオーストラリア規格協会は、国際標準化機構(ISO)に対して、ブロックチェーンの国際標準規格に関する提案を行い、2016年9月15日に承認された。
同協会は、新たに設立された「ISO/TC307ブロックチェーンと電子分散台帳技術に関する専門委員会」の事務局機能を担う。その後、同年12月に公開ブロックチェーン調査を実施し、2017年2月17日には、ブロックチェーン規格ロードマップ・ワークショップを開催している。
さらに、同協会は、2017年3月2日、ブロックチェーンの開発、統治、利用に関わる技術的課題を特定し、オーストラリア独自のユースケースを提示して、課題解決の取組の優先順位付けをするために、「ブロックチェーン規格のためのロードマップ」と題する報告書を公表した。
同報告書では、ブロックチェーン用語集の策定、そしてプライバシー、セキュリティ、IDに関する包括的な規格の開発、ガバナンスやリスク管理に関連する課題の取組、これらを踏まえた参照アーキテクチャ規格開発、ブロックチェーンシステム間の相互運用性の確立などを提言している。また、金融分野におけるユースケースの優先領域として、「電子通貨」「貿易金融」「送金」「商品取引」「その他の取引」の5つを挙げた。
ブロックチェーンに関わる具体的な概念実証(PoC)、ユースケース開発の段階では、個々の業種、業界や技術領域にある既存の標準規格との整合性確保も重要な課題だ。以下の図は、同報告書が挙げた、ブロックチェーン規格に関連する既存の国際標準規格(例)を示している。
クラウドコンピューティング、情報セキュリティなど、ビッグデータの運用管理に関わる国際標準規格も多く含まれており、昔ながらの縦割サイロ型の取り組みでは、ブロックチェーン利活用のスピードに追い付かない可能性は大きい。特にマネジメント規格の場合、組織の経営トップのコミットメントを要求事項にしているものが大半であり、規格対応の簡素化や効率化も欠かせない。
日本においては、一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)が国内審議団体として国際標準化活動の中核を担い、日本からの規格提案、審議文書の検討、関連団体、企業との連携などを進めることになっている。2017年4月にオーストラリア・シドニーで開催予定のISO/TC307ブロックチェーンと電子分散台帳技術にかかる専門委員会における動向が注目されるところだ。
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