レーザー照射で野菜の産地が分かる? NTTの新技術にびっくり(1/2 ページ)
NTTテクノクロス、ザファーム、エス・アイテックスの3社が、野菜のネット販売のプロジェクトを共同で展開。この中でNTTテクノクロスが、野菜の産地を「科学的」に証明する新技術を使っている。高速通信を実現するための技術をどう転用したのだろうか。
2000年台初頭に発生したBSE問題以降、「食の安全」に対するニーズを背景に、食材の産地証明を行うケースが増えている。スーパーマーケットで、青果商品の生産者をPOPなどで紹介しているのを見たことがある人も多いだろう。これまで食材の産地を証明する手段は、農協などが発行する「産地証明書」という書類くらいしかなかったが、データ分析で“科学的”に産地を証明しようという動きもある。
4月4日、NTTテクノクロス、農園リゾートを運営するザファーム、献立アプリ「ソラレピ」を運営するエス・アイテックスの3社が、「生野菜超え!おいしい冷凍野菜とおやつやさいキャンペーン」を開始したと発表した。
ザファームがネット通販で展開している野菜(生野菜1種、冷凍野菜6種)に、NTTテクノクロスが産地および、野菜の品質(糖度や栄養素)と合わせて付加情報を提供、管理栄養士が監修したオリジナルレシピをソラレピ上で公開する。共働き世帯が増える中、家事にかかる時間の短縮を支援するのが狙いだ。
レーザー照射で野菜の産地が分かる?
NTTテクノクロスは、NTT研究所が開発していた通信用のレーザー光源を使い、野菜の産地を証明する。野菜の中に含まれる水分を蒸発させ、蒸気にレーザーを照射することで、水分に含まれる水素および酸素の安定同位体(通常とは質量が異なる原子)の比率を測定。ガスが吸収した光の波長で分析を行うが、レーザー光源の性能が高いため、高精度な分析が行えるのだという。
植物は産地で降った雨水を取り入れて生育するため、野菜の中に残っている水分は、各地の雨水の影響を受ける。緯度や高度によって雨水の成分は変化するため、各地の水源のデータと照合して、産地を特定できるというわけだ。
実証実験自体は2016年から始めており、結果が良好だったため実用化に踏み切った。実際の野菜を使うため、研究に役立つデータが得られるというのもNTTテクノクロスにとってのメリットになる。
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