もっと「ひと」中心の働き方改革、デジタル技術で実現へ
デジタル時代にビジネスを成功に導くにはテクノロジーの活用が欠かせない。そのトレンドを調査した「Accenture Technology Vision 2017」の日本版が発表された。取り上げられたのは、「ひと」のためのテクノロジーだ。
「人が企業のために働くと考えるのはやめよう。むしろ、企業が人のために働くよう仕向けるのだ」── これは、だれもがネットで自由に情報を発信できるWeb 2.0の概念を提唱したティム・オライリー氏の言葉だ。
アクセンチュアは3月12日、調査レポート「Accenture Technology Vision 2017」の日本版を発表した。世界31カ国、約5400人の規模で実施され今年の同レポートでは、人を中心としたテクノロジーの進化が人に新たな力をもたらし、ビジネスや社会を大きく変えていくと予測している。
アクセンチュアでデジタルコンサルティング統括本部長を務める立花良範氏は、「近い将来、デジタルテクノロジーによって、企業は企業視点の目標を追求する存在から、顧客や従業員に寄り添い、彼らの目標を達成するパートナーへの変革を余儀なくされるだろう」と話す。
Accentureは毎年、経営層や情報システム部門長を対象した調査を実施、向こう3年から5年のうちにビジネスや社会に大きな影響を及ぼすだろうテクノロジートレンドを挙げ、どのように活用していくべきか、考慮すべき課題なども併せて紹介している。今年は以下の5つがデジタル時代のビジネスを成功に導くためには不可欠だとして定義されている。
- AIは新しいユーザーインタフェース
- 無限の可能性を持つエコシステム
- 人材のマーケットプレイス
- 「ひと」のためのデザイン
- 未踏の領域へ(新たな産業の創造)
ここ数年の傾向を見ると、2013年から2015年までは、いわゆる「ビジネスのデジタル化」がテーマとして取り上げられたが、昨年から「ひと」が主役として登場する。ちまたでは、人工知能(AI)によって多くの仕事が奪われる、といった議論もあるが、今年のレポートでは、「企業は人を中心に据え、その能力を最大限に発揮させるために最先端のテクノロジーをコントロール/デザインすべきだ」と踏み込んでいる。
AIを人に寄り添うためにデザインしていけば、例えば、「Amazon Echo」のような新たなユーザーインタフェースとなり、顧客とのより良い関係を築くことができるようになる。
また、人材をマッチングし、オンラインでも効率良く働けるテクノロジーの登場によって、組織構造の変化や労働力の流動化が促進され、企業は従業員を囲い込むのではなく、彼らの視点に立ってその目標達成を手助けする存在に生まれ変わることもできる。レポートでは、フリーランスをマッチングするクラウドソーシングサイト「Upwork」をパイロット導入したP&Gの成功事例が紹介されている。同社では、Upworkを活用して開発した製品は、従来の方法に比べて60%も早いスピードで市場に投入できたという。
これまでフルタイムの従業員とパートタイムや派遣、外部委託などを組み合わせて事業を運営してきた日本企業だが、根本的には「上意下達」の組織構造のまま。少子化と高齢化による労働人口の減少が進む中、国を挙げた働き方改革の取り組みが始まっている。今こそ組織のフラット化はもちろんのこと、プロジェクトごとに必要に応じてフリーランスの力を借りて事業を運営していく「オンデマンド型企業」への迅速な組織変革が求められていると言っていい。
「顧客や従業員に寄り添い、彼らの目標達成を手助けするというと、まるで慈善事業のように聞こえるかもしれないが、そうすることで顧客とより良い関係を築くことができたり、企業の競争力を高めることができたりと、理にかなっている。さらには、GEのように顧客が何を求めているのかをデジタルテクノロジーによって追求することで、単なるモノ売りから脱却し、市場規模のより大きな“成果を売るビジネス”へと軸足を移していくこともできる」と立花氏は話した。
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