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コレ1枚で分かる「テクノロジードリブンの時代」即席!3分で分かるITトレンド

テクノロジーによる時代の再定義ともいえる「テクノロジードリブン」の波と、テクノロジードリブン時代の変化の行方を読み解く鍵となる「デジタルトランスフォーメーション」について解説します。

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この連載は

 カップめんを待つ間に、電車の待ち時間に、歯磨きしている間に“いまさら聞けない”ITトレンドが分かっちゃう! 今さら聞けないITの最新トレンドやビジネス戦略を、体系的に整理して分かりやすく解説する連載です。「この用語、案外、分かっているようで分かっていないかも」「IT用語を現場の社員にもっと分かりやすく説明できるようになりたい」――。情シスの皆さんのこんな課題を解決します。


テクノロジードリブン

 ここ数年のビジネス環境を考えると、こんな言葉がふさわしいかもしれません。例えばUberやAirbnbといった“テクノロジードリブンな”ビジネスが既存のビジネスを破壊しようとしています。

 テクノロジードリブンとは、テクノロジーの進化がこれまでの常識を大きく変えてしまうことであり、それを前提に新たな常識が築かれることを表す言葉です。IoTや人工知能(AI)の普及もまた、そんなテクノロジードリブンを支えるキーワードといえるでしょう。

 テクノロジーは、これまでの常識の延長線ではなし得ない劇的な生産性やコスト削減を実現し、これまでの常識を破壊する新しいビジネスを創出する手段として、その存在感を増しつつあります。

 クラウドは企業の基幹業務を支えるシステム基盤として広く世の中に受け入れられつつあります。モバイルやウェアラブルは「前提」であり、ソーシャルメディアは人のつながりの在り方を大きく変えてしまいました。さらに、「オープン」が人々の価値観や企業戦略の前提を変えつつあります。オープンソースソフトウェア、オープンデータ、オープンコミュニティーへのコミットメントなくして、これからの時代を生き抜くことはできません。

 これはテクノロジーによる時代の再定義であり、既存のビジネスや社会基盤を「デジタルで組み替える」動きといえます。

デジタルトランスフォーメーション(DX)

 これは、これからのビジネスの方向を指し示している言葉です。

 デジタルトランスフォーメーションは、サービス化、オープン化、ソーシャル化、スマート化の4つの大きな力にけん引されます。

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【図解】コレ1枚で分かる「テクノロジードリブンの時代」

サービス化

 ジェットエンジンを「出力×稼働時間」で従量課金する、あるいは建築機械を測量・設計・自動運転とともにサービスとして提供するといった、これまでは販売が常識だったビジネスにもサービス化の流れが生まれています。

 また、サーバやストレージ、ネットワーク設備やPCなどのコンピュータ資源は、もはやクラウドサービスとして使用することは必然の流れになろうとしています。システムを開発し、実行する環境さえもクラウドに頼ることで、開発の生産性を劇的に高め、運用管理を不要とします。

 人々は、これまで価値を手に入れるためにその手段を所有しなければなりませんでした。しかし、さまざまな価値がサービスとして手に入れられる時代へと変わろうとしています。

 ユーザーが求めているのは、結果としての価値であり、その手段ではありません。手段を所有しなくても価値が手に入るのであれば、そちらに人々の需要がシフトするのは必然なのです。

オープン化

 「特定の企業の所有する技術や製品ではなく、広く、多くの人が関与する技術や製品の方が進化のスピードは早く、安心・安全も担保される」。そんな常識が広く受け入れつつあります。

 オープン化の動きは、これまでも世の中の常識が変わる節目に度々登場しています。例えば1964年、IBMは虎の子である自社のコンピュータ技術仕様を「システム/360アーキテクチャ」としてオープン化しました。これにより、IBMのコンピュータの周辺にさまざまなビジネスが生まれ、今のビジネスコンピュータ市場を生み出すきっかけとなりました。また1981年、やはりIBMは自社のPCを開発・販売するに当たり、主要な技術を囲い込むことをせず、IntelやMicrosoftから調達し、PC市場拡大のきっかけを作りました。インターネットやLinuxといった技術もオープンであったことが、その後の発展と進化を支えてきたのです。

 オープンは、これまでも時代を動かすきっかけを生み出してきました。そして、いま多くの企業が再びオープンに積極的に関わろうとしています。

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 例えば、自らが開発したテクノロジーをオープンにすることは、もはや社会正義にも近い感覚となりつつあります。そして、自らがオープンコミュニティーの中で存在感を高め、リーダーシップを示すことが、自らのビジネスを成長させる原動力になることが受け入れられ始めています。もはやビジネスは、オープンに支えられ、オープンへのコミットメントなくして生き抜くことができなくなったともいえるでしょう。

 インターネットの普及やソーシャルメディアなどはこのオープン化を加速させる推進力として、その役割をますます強めています。

ソーシャル化

 インターネットの普及とともにコミュニケーションコストが劇的に下がりました。その結果、誰もがフラットにつながることができるようになりました。

 また、コミュニケーションにハブや管理者は不要となり、そこに権力や富が集中することは不可能になろうとしています。ソーシャルメディアやピア・ツー・ピア通信のテクノロジーは、この流れをさらに加速しています。

 UberやAirbnbなど、これまでの常識を破壊しようとするビジネスは、こんなコミュニケーション基盤に支えられています。このコミュニケーション基盤は「シェアリングエコノミー」を生み出し、これまでの常識を破壊する新たなビジネスを登場させる基盤としても大きな役割を果たすことになります。

スマート化

 個別最適化は無駄を随所に生み出してしまうので、全体最適化こそがあるべき姿だといわれ続けてきました。しかし、IoTの普及により、個別の現実をきめ細かくリアルタイムに捉えることができるようになり、この常識も変わろうとしています。

 IoTによって収集された「個別の事実」は、人工知能によって解析されます。そして、他の「個別の事実」との関係を考慮しつつも、可能な限り個別最適化を実現しようとするでしょう。サンプルデータによる平均的・一般的解釈や人間の判断が介在する場合は、とてもできることではありません。

 IoTをはじめとして、ビジネスがデジタルに構築されるようになれば、現実世界とデジタル世界は表裏一体の関係として存在することになります。現実世界は、簡単にそれを変えることも破壊することもできませんが、デジタル世界は、シミュレーションというカタチで、どのようにでも変えることができるし、破壊することもできます。

 人工知能はそのための手段として大きな役割を果たすことになります。そこで得られた新たな知見、未来予測、最適解は、私たちの住む現実社会をより快適にしてくれます。スマート化とは、このような現実世界とデジタル世界を一体の仕組みとして捉え、新たな社会システムを構築しようという変化なのです。

 また、機械が人間の代わりを果たしてくれる範囲はますます広がっていくでしょう。肉体的にも知的にも、時間と労力をかけることで生み出してきた価値は機械に置き換えられていきます。その方が、はるかに効率的で正確だからです。時間もコストも大幅に削減され、生産性は飛躍的に高まります。

 一方で、人間の役割は大きく変わってくるでしょう。感性、協調性、創造性がこれまでにも増して重視されるようになり、人間は新たな進化のステージに立たされることになるのです。

著者プロフィル:斎藤昌義

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未来を味方にする技術

 日本IBMで営業として大手電気・電子製造業の顧客を担当。1995年に日本IBMを退職し、次代のITビジネス開発と人材育成を支援するネットコマースを設立。代表取締役に就任し、現在に至る。詳しいプロフィルはこちら。最新テクノロジーやビジネスの動向をまとめたプレゼンテーションデータをロイヤルティーフリーで提供する「ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA」はこちら


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