電子レシートやIoTショッピングカートーートライアルCIOが語る、スーパーマーケットの未来とは?(1/3 ページ)
電子レシートやタブレット内蔵ショッピングカートなど、先進的なIT活用で知られる小売業界の「トライアル」。同社のCIOが語る、さまざまな取り組みからはスーパーマーケットの未来が見えてくる。
昨今はさまざまな業種でビッグデータ活用が進んでいるが、中でも大きな可能性があるのが流通、小売業界といわれている。消費者との接点が多く、他産業に比べて多様かつ大量のデータを保有しているためだ。その施策もビジネスに直結するものが多く、気温データと組み合わせて需要予測をしたり、Webの行動履歴からレコメンドを行ったりとさまざまだ。
米ウォルマートに学び、日本型のスーパーセンター(食料品スーパーとディスカウントストアを一体化した店舗)「トライアル」を展開するトライアルホールディングスも、データ活用に取り組む企業の1つ。全国199店舗を展開する同社の年商は計3510億円。徹底したROI経営で急速に成長し、今後5年で年商1兆円を目指している。
経済産業省からの委託事業で「電子レシート」の実証実験を行うなど、先進的なIT活用に取り組む同社で今何が起きているのか。日本データマネジメント・コンソーシアム(JDMC)のユーザー会で講演を行った、トライアルホールディングス グループCIO、西川晋二氏の話をお届けしよう。
商品戦略の要は「カテゴリーマネジメント」
トライアルがIT活用に積極的な理由の1つに、同社の出自がある。創業期はソフトウェア開発や流通業向けのシステムを開発していたIT企業だったのだ。そのため、社員がITに対して理解があり、「ITの力で流通を変える」ことを目指しているという。
業務アプリが入った従業員専用のモバイル端末を用意したり、メンバーズカードを発行して顧客データを収集したりと、IT関連の施策は多岐にわたるが、データ活用基盤は自社で開発している。顧客ID付きPOSデータを約100億件保存するデータベース「SMART」だ。
同社の商品戦略は、商品カテゴリーをSBU(Strategic Business Unit=戦略的事業単位)としてマネジメントをしていくことにある。「MD-Link」という、POSデータを基に製品の売り上げや分析を行えるサービスを、カテゴリーキャプテン(カテゴリー全体の成長を相談できるメーカー)に向けて公開し、両者でユーザーがより“求める”品ぞろえを実現し、売上と収益の改善を行うという。
「トライアルは販売の専門家として売り場を確保できる。一方のカテゴリーキャプテンは、商品力の専門家として豊富な品ぞろえやお得な商品を供給できることが強みです。『MD-Link』の契約をしているのは230社にのぼり、当社のさまざまなデータをオープンにすることで、併売分析などを実施して、売上高とお客さまの満足の両立を図ります」(西川氏)
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