電子レシートやIoTショッピングカートーートライアルCIOが語る、スーパーマーケットの未来とは?(3/3 ページ)
電子レシートやタブレット内蔵ショッピングカートなど、先進的なIT活用で知られる小売業界の「トライアル」。同社のCIOが語る、さまざまな取り組みからはスーパーマーケットの未来が見えてくる。
タブレット内臓型「IoTショッピングカート」の可能性
同社が最近力を入れているのが、タブレット付きのショッピングカート「IoTショッピングカート」だ。消費者が店頭で買うものを決めるのは、来店前よりも店内にいるときのほうが多い。これは同社の調査で明らかになっているという。
ユーザーが店内を回遊しているときに情報を与えるのが、より効果的――そこでトライアルはショッピングカートに目を付けた。タブレットをショッピングカートの前面につけて、ポイントカードでログインするとユーザーに合った商品情報やお買い得商品の情報を表示するほか、商品の棚へも誘導する。IoTショッピングカート利用者の買い上げ点数は昨対比で1.2倍、カート非利用者と比べて1.5倍になるなど、非常に高いことが分かっている。
「今後は館内放送の代わりに、タイムセールなどのリアルタイムな案内を行ったり、個別のお客さまだけが得られる割引を表示したりすることで購買を促したいと考えています。POSレジ機能を追加し、買い物中にスキャンを完了して支払いを簡素化することも、2017年中に実現する予定です。これでレジ前の行列を軽減できるはずです」(西川氏)
スマホアプリを使って入金し、POSレジ機能付きのIoTショッピングカートで商品をセルフスキャン、その後自動決済レーンを通過すれば、レシートはアプリを通じてスマートフォンに送られる……といった利用シナリオを西川氏は想定している。万引き防止のため、ユーザーの顔認証やカート内の重量チェックといった対処もする予定だという。
また、このIoTショッピングカートにGPSを付けることで、ユーザーの移動履歴を取ることもできる。これはECサイトでCookieからクリックストリームを分析して、UX(顧客体験)を改善する活動を実店舗で行うイメージだ。頻繁に棚の変更をすることはできないが、タブレット上により適切な情報を表示できるという方向性で実装を考えているそうだ。
「このような取り組みを持続的に続けられれば、当社は売り上げが向上し、販促コストやレジコストを下げることができますし、お客さまにとっては、利便性が向上し、レジに並ぶこと無くストレスフリーで買い物ができます。ITを活用することで、流通にまつわる情報に革命を起こしていく。これがトライアルの考えるリテールテクノロジーカンパニーの姿です」(西川氏)
筆者紹介:寺澤慎祐
大学卒業後に商社に10年勤務し、日本のITベンチャーでマーケティング責任者を務めたあと、サン・マイクロシステムズの政府官公庁向けビジネス開発を行う。2010年には英国ウェールズ大学のMBAを取得し、2011年にB2Bマーケティングコンサルタントとして独立。2015年にデータキュレーション社を設立した。現在は、データキュレーションの代表であると共にビジネススクールで講師も務め、JDMC(日本データマネジメント・コンソーシアム)のユーザー会にも参加し、データ活用を啓もうしている。
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