恐竜の逆襲!? “オラクルならでは”のクラウドサービスは広がるか:Weekly Memo(1/2 ページ)
日本オラクルがクラウド事業で独自色を一層強く打ち出している。同社が開催したイベントから、その戦略の中身を探った。
電電公社時代の電話サービスをITの世界で実現
「オラクルはIT業界で“ダイナソー”(恐竜)に例えられることもあるが、クラウド分野では“ニューカマー”(新参者)だ。ただし、(4年前に)やると決めてからは急成長を遂げており、今後さらに加速していく」――日本オラクルの杉原博茂社長兼CEOは、同社が4月25日に都内ホテルで開いたプライベートイベント「Oracle Cloud Platform Summit Tokyo 2017」の基調講演で、開口一番こう強調した。
杉原氏によると、直近の2017年度第3四半期(2016年12月〜2017年2月)における米OracleのSaaS/PaaSの売り上げは前年同期比186%伸び、2400社のPaaS顧客および2600社のIaaS顧客を新規に獲得。日本オラクルもクラウドサービス(SaaS/PaaS/IaaS)の売り上げが同200%、SaaS新規顧客数が同300%伸長したという。
オラクルのクラウド事業はSaaSが先行してきたが、2017年来クラウドプラットフォーム(IaaS/PaaS)にも注力しており、現在、図1のように3つの利用形態を提供している。その中でも同社ならではのサービスが、「Oracle Cloud at Customer」(以下、 at Customer)である。
杉原氏はこのサービスについて、「いわば電信電話公社時代の電話機のようなもの。利用者は電電公社から借り受けた電話機で、通信料金を払えばネットワークを通じてどこにいる人とも会話ができた。その運用や安全性は全て電電公社が担保していた。オラクルはこの仕組みをITの世界でやろうとしている」と説明した。
杉原氏に続いて登壇した日本オラクルでクラウド事業を統括する石積尚幸執行役副社長はこのサービスについて、「オラクルのデータセンターにあるマシンをお客さまのところに置き、オラクルが運用管理を担うことで、パブリッククラウドとして使っていただけるようにした。これにより、お客さまはIT資産を持つことなく、データの保護やネットワークの遅延といったクラウドが抱える課題を解消することができる」と、他にはないメリットを強調した。
at Customerについては、本コラムでも2016年4月25日掲載の「クラウドで出遅れたオラクル、“いいとこ取りクラウド”で巻き返せるか」および2017年2月20日掲載の「NECとの提携に見る、Oracleのクラウドサービス新戦略」でも取り上げてきたので参照いただきたい。
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