“孤独で時間に追われる”仕事が激変 JAL整備士の働き方を変えた“神アプリ”の作り方:Watson Summit 2017(1/2 ページ)
閉ざされた環境で孤独に、大忙しで作業する――。そんな航空整備士たちの働き方を変えたiPhoneアプリがある。IT部門は、整備士たちの課題をどのような形で解決したのか。JALエンジニアリング IT企画部 部長 西山一郎氏が語った。
閉ざされた環境で孤独に、そして大忙しで作業する――。そんな航空整備士たちの働き方を変えたiPhoneアプリがある。JALエンジニアリングとIBMが現場の声を聞きながら開発したものだ。
両社は、どうやって現場の課題を洗い出し、どのような形でアプリに実装したのか。IBM Watson Summit 2017の講演に登壇したJALエンジニアリング IT企画部の部長を務める西山一郎氏が説明した。
膨大な作業を1人きりで 整備士の孤独な戦い
2009年に設立された航空機整備会社のJALエンジニアリングは、親会社である日本航空の整備作業を担う企業だ。海外エアラインの発着整備も行っており、現在、世界50社超の企業から、エンジンなどの整備を受託している。従業員数は約4000人、その中には外国人スタッフも少なくない。
整備士は、航空会社が旅客サービスを提供する上でとても重要な役割を果たしている。安全性や、飛行機を予定通りに運行させる定時性の確保はもちろん、快適な機内環境を常に提供できるよう、機体の機能や信頼性を維持し、向上させることも整備士の仕事。西山氏は、「電子部品の整備や劣化した部品の交換などを行う部品整備だけでなく、各空港で行っている運航整備などの機体整備が不可欠」と話す。
この機体整備には大きく分けて2つの種類がある。1つは、年に1度行う「点検重整備」。航空機を格納庫に入れて、1週間ほど機能を止めたうえで隅々まで整備する。車で言うところの車検のようなものだ。もう1つは、航空機が到着してから離陸するまでの間に行う「運航整備」だ。
西山氏によれば、後者の運行整備にはさまざまな制約があるという。国家資格を持つ整備士が担当しなければならない上、その国家資格が飛行機の機種別に存在していることから、日々の運航整備を確実に行うためには、資格を取得するための人材育成に加えて、整備士を効率的に配置していくことが求められるのだ。
運航整備には、機体の回りをぐるりと一周して、航空機のエンジンに鳥がぶつかっていないか、雷に打たれてダメージを受けていないかなどを確認する「サークルチェック」のほかに、乗務員が不具合を記録する「ログブックの確認」などがある。
これらの作業で問題が確認された場合は即座に修理を行い、航空機が予定通りに出発できるようにしなければならない。しかし、作業は基本的に整備士が1人で行っているにもかかわらず、整備時間は大型機のボーイング777でも50分しか与えられない。
「ほとんどの作業を1人で行うことが求められており、それが困難な場合は無線機で報告するという形式になっています。整備士の味方は、この無線機のみ。作業に携わる整備士は、閉ざされた環境で孤独に作業をしているのです」(西山氏)
こうした作業環境を改善するために、検討が始まったのがモバイルアプリの導入だった。「ちょうどその頃、IBMから航空業界向け標準アプリの共同開発を持ちかけられたのです」(西山氏)
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