「2017年はOpenStack普及元年」は本当か 今、注目を集めている理由:Weekly Memo(2/2 ページ)
AWSに対抗するクラウド基盤としてオープンソースによって開発が進められてきた「OpenStack」。最新情報から、その現状と今後の行方を探る。
きめ細かな分散型サービスでAWSなどと差別化へ
IDCの見解と同様、「OpenStackは成熟しつつあり、普及期に入っている」と話すのは、日本OpenStackユーザー会の会長を務めるNTTソフトウェアイノベーションセンター主幹研究員の水野伸太郎氏だ。同会が5月17日に開いた記者説明会でのひとコマである。
水野氏はその会見で、米マサチューセッツ州ボストンで5月8日から11日にかけて開かれた「OpenStack Summit Boston 2017」で注目された話題について次のように説明した。
まず、OpenStackの現状については、大手ベンダーをはじめ世界185カ国の企業や団体が開発および普及活動を支援。7万3000人を超えるエンジニアがオープンソースを通じて開発に携わっており、既に500万を超えるコンピューティングコアで利用されているという。水野氏は特に「2016年から2017年にかけての導入数が44%増加し、フォーチュン100企業の半数に利用されるようになった」と強調した。
また、OpenStackの利用形態については「当初は大手ネットサービスベンダーが大規模なプライベートクラウドに適用する形でスタートしたが、最近では規模に関係なく容易に多様なユースケースに適用できるプライベートクラウド基盤として利用されるようになってきた。その中で新しいサービスも出現してきた」と説明した。
その新しいサービスというのが「Remotely-Managed Private Cloud」である。外部からマネージをするプライベートクラウドで、つまりは「Private Cloud as a Service」のことだ。ここだけは英語の方が分かりやすいと考えたのでそう表記した。ちなみに、OpenStackのマーケットプレイスサイトでは、このサービスに関する情報が提供されている。(図2)
水野氏によると、「このPrivate Cloud as a Serviceを多様なユースケースに応じてきめ細かく利用できるようにしていきたい」という。同氏はあくまでもユーザー会の立場なので「個人的な見解」と前置きしたが、どうやらPrivate Cloud as a Serviceの展開が今後のOpenStack普及の大きなカギを握っているといえそうだ。
では、Private Cloud as a ServiceがAWSなどのメガクラウドベンダーとの差別化戦略になり得るのか。会見の質疑応答でAWSなどとの対抗戦略について聞いたところ、水野氏は次のように答えた。
「多様なユースケースにきめ細かく対応するクラウドサービスは、メガパブリッククラウドではなかなか難しいはずだ。イメージでいえば、AWSなどのパブリッククラウドは中央にドンと構えて標準サービスを提供するのに対し、OpenStackはユーザーの手元に分散してそれぞれのニーズに対応したサービスを提供するような図式だ。そのきめ細かな対応と、特定のベンダーにロックインされないというオープン性が、OpenStackの大きな差別化ポイントになる」
実際に、OpenStack陣営の有力ベンダー各社はPrivate Cloud as a Serviceに注力している。果たして、IDC Japanが言うように、2017年が「OpenStack普及元年」となるか。Linuxのような存在になるかどうかは未知数だ。ただ、少なくともクラウドが「システム構築」ではなく「サービス」へと着実にシフトしていくことだけは間違いなさそうだ。
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