10分で分かる、今さら聞けないクラウドの真の価値:デジタル改革塾(2/3 ページ)
登場以来、私たちの生活を劇的に変えたモバイルとクラウド。この2つのトレンドは、ビジネスの世界をどう変えたのか。
「失敗のコスト」が劇的に下がり、イノベーションを加速
企業はクラウドが登場したことで、必要なシステムを簡単に素早く、低コストで手に入れられるようになった。従来であれば、ITを使って新しいプロジェクトを立ち上げたいと思っても、失敗した場合のリスクを考えて着手できなかった案件が、クラウドなら「数千円の損失」で済むのでハードルが下がる。これこそが、爆発的なイノベーションが起きている理由の1つだ
「クラウドの登場によって、失敗のコストが下がった。成功確率は今も昔も変わらないだろうが、今は失敗のコストが安くなったからたくさん失敗できる。失敗の数が増えれば、当然、成功の実数も増える。それがITにおけるイノベーションを爆発的に加速させている」(斎藤氏)
ITの難しさが隠され、利用者の裾野がどんどん広がっていく。そしてITの利用価値がさらに高まっていく――。このようなサイクルが生み出されたことが、クラウドのもたらした大きな価値というわけだ。
クラウドの分類
斎藤氏は続けて、クラウドには提供されるサービスモデルによって「SaaS」「PaaS」「IaaS」があることに触れた。アプリケーションをサービスとして提供するのがSaaSで、これは例えば、Office 365、Salesforce、Gmailなどが挙げられる。
PaaSは、データベースの機能を提供する。データベースを使うには、導入設定やバックアップ、トラブル対応、ソフトウェアの修正パッチの適用などを行う必要があり、この運用の手間を全部請け負ってくれるのがPaaSだ。
IaaSは、物理的なコンピュータをユーザーごとに能力で切り分ける。「1台のハードウェアだが、それをあたかも10台や20台のコンピュータが存在するように見せかける技術を『仮想化技術』という。仮想化によってサーバやストレージを貸し出してくれるのがIaaS」(斎藤氏)
クラウドはサービスモデルだけでなく、「配置モデル」でも分類できる。企業が「自分たちの会社だけで専用のクラウドを使いたい」と考えた時に適しているのがプライベートクラウド。施設やデータセンターを自社で借りて専用のクラウド環境を構築するスタイルで、当然、費用も掛かる。
一方、パブリッククラウドは共同利用モデルだ。運用管理の全てを「クラウドの事業者へ任せる」という考え方だ。クラウドは、大きく分けるとプライベートとパブリックに分けられるが、物理的にはパブリックで、全体の運用管理はクラウド事業者に任せ、特定の領域を自社専用に割り当ててもらう使い方がある。これを「ホステッドプライベートクラウド」という。また、プライベートとパブリックを必要に応じて使い分けようという、「ハイブリッドクラウド」という考え方もある。
クラウドが備える5つの特徴とは
斎藤氏は、クラウドの特徴として次の5つを挙げた。
- オンデマンドセルフサービス→メニューから選ぶだけで必要なシステムの構成や機能を調達できる
- 幅広いネットワークアクセス→PCだけでなく、スマートフォンなどさまざまなデバイスからアクセスできる
- リソースの共有→複数の企業が共同で利用できる領域を持っている
- 迅速な拡張性→必要に応じて拡張や縮小ができる
- サービスの計測可能・従量課金→どれくらい使ったかがひと目で分かる
「これらの5つの特徴を持っているものを、クラウドコンピューティングと呼ぼうという考え方がある」(斎藤氏)
関連記事
- Amazon Echoはなぜ、既存のビジネスを食い尽くすのか
今、起こっているデジタル変革はこれまでと何が違うのか、その背景には何があり、これからどのような変化が起こっていくのか。その変化に私たちはどう対応すればいいのか――。斎藤氏の講演から読み解く。 - コレ1枚で分かる「5G」
超高速・大容量な通信が可能な次世代の通信方式として、2020年の商用可が見込まれている次世代通信「5G(第5世代移動通信システム)」。そのどこがスゴイのか、押さえておきたいポイントをまとめます。 - コレ1枚で分かる「デジタルトランスフォーメーションを支える5つのテクノロジートレンド」
デジタルトランスフォーメーションが進みゆく未来、ITビジネスはどのような変化をしていくのか――ビジネス変革を推進するクラウドネイティブとアンビエントITの流れを軸に、キーとなる5つのITテクノロジートレンドについて解説します。 - コレ1枚で分かる「クラウドによってもたらされる3つの価値」
クラウドの導入は、情報システム部門、経営層、ユーザーのそれぞれに価値をもたらします。今回はクラウドによってもたらされる3つの価値を解説するとともに、価値を引き出すためのコツを紹介します。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.