脱Accessで作業速度が5倍――ネット専業「じぶん銀行」のデータ活用法とは?(1/3 ページ)
スマートフォンでATMを利用できるようにするなど、インターネット銀行ならではの施策を次々と打ち出している「じぶん銀行」。同行が今、目指しているのはDWHを活用した「1to1マーケティング」だという。
手のひらに銀行を――。「スマホ銀行」というコンセプトを掲げ、銀行の各種サービスをスマートフォンアプリ上で行えるようにしてきた「じぶん銀行」。他のメガバンクやインターネット銀行と異なり、オンラインバンキングへのアクセスのうち、スマートフォン経由の比率が約8割と高いのが大きな特徴だ。
最近では、キャッシュカードではなく、スマートフォンでATMを利用できるようにしたり、住宅ローンを契約できるようにしたりするなど、モバイル利用を前提としたサービスを展開しており、これらのサービスでしっかりとした収益を上げるビジネスモデルを確立するのが、同行の大きな課題だという。
どうすれば、より多くのユーザーに、スマートフォンアプリのさまざまなサービスを使ってもらえるか。じぶん銀行が今注力しているのが、アプリを通じたCRMだ。サービスの利用履歴やアクセス履歴、季節性や為替変動といった、さまざまな要因を分析し、ユーザー一人一人のニーズをつかもうとしている。
商品の増加とともにデータがバラバラに
しかし、顧客の行動を分析するにも大きな課題があった。商品が増えるに従って、データが社内に散在するようになってしまったのだ。
「お客さまに最適な提案をするには、さまざまな角度からお客さまを知ることが重要です。しかし、カードローンならカードローン、FXだったらFX、銀行系だったら銀行系という形で、データが基幹システムごとにバラバラに存在していました。サービスをまたがるような分析をするには、毎回CSVでデータを吐き出して、1つにつなげてAccessで回す必要がありました」(じぶん銀行 マーケティングユニット マーケティング部長 井上直樹さん)
データを一元管理しようと、DWHの導入を考えたのは2014年ごろ。マーケティング部とシステム開発部の両者でプロジェクトを進めたが、基本的にはマーケティング部が主導していたそうだ。IBM NetezzaやOracle Exadataなど、さまざまな製品を検討したが、処理速度やアプリケーションのUIなどが決め手となり、テラデータの「Teradata Data Warehouse Appliance」を採用した。
システムの構築期間は、要件定義なども含めて9カ月程度だったというが、最も苦労したのは利用するデータの精査や、必要なキー情報の定義といった“仕組み作り”であり、「気が遠くなるような途方もない作業」だったという。
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