Windows 10 Fall Creators Updateの影響を考える:Enterprise IT Kaleidoscope(2/2 ページ)
Windows 10のアップデートが、春と秋の年2回、定期的に行われることになった。次のFall Creators Updateの機能については、まだ全貌が見えたわけではないが、企業ユーザーにどんな影響があるのか考えてみよう。
ただし、Windows 10に関しては、CBB(Current Branch for Business)の場合、2つ前までのアップデートまでしかサポートされない。このため、Creators Updateがリリースされた段階で、2015年7月にリリースされたWindows 10(オリジナル)のサポートが切れることになる(CBBは新しいアップデートがリリースされた直後ではなく、リリース後数週間を移行予備期間として残している)。つまり、企業においても、2つ前までのWindows 10に対しては、セキュリティパッチなどがリリースされるものの、3つ前のバージョンになると、セキュリティパッチなどが提供対象外になる。この場合は、アップデートを行う以外に選択肢はない(なおコンシューマー向けのCurrent Branchに関しては、常に新しいアップデートを適用することが前提となっている)。
このため、Anniversary Updateを導入した企業は、2017年のCreators Updateを2回スキップした場合、2018年の春にリリースされるアップデートには絶対に移行する必要がある。こういった部分を考えて、IT管理者はアップデートスケジュールを考えていくべきだろう。
企業においても、CBと同じように常に最新のアップデートを利用していくというのも、1つの考え方だ。ただ、検証や互換性の評価などを行うことを考えれば、年2回のアップデートに追従していくのも労力がかかる。このあたりは、どういったタイミングでアップデートしていくのかを決めておく必要があるだろう。
Windows 10は、最新版と2つ前までのアップデートがサポート対象となる。このため、3つ前のバージョンのWindows 10に対しては、セキュリティパッチの提供が行われなくなる(de:code2017の講演資料から引用)
Windows 7のプリインストールPCは減少へ
もう1つ、企業においては、Windows 7プリインストールPCの入手が徐々に難しくなっていることも認識しておく必要があるだろう。
Microsoftでは、Intelの第7世代Coreプロセッサ、AMDのRyzenプロセッサなどはWindows 10でしかサポートしないことを発表している。このため、ほとんどのPCメーカーでは、Intelの第7世代Coreプロセッサ、AMDのRyzenプロセッサを採用したPCでは、Windows 7へのダウングレードモデルを販売していない。
もし、企業ユーザーが今後新たにWindows 7搭載PCを入手したければ、第6世代のCoreプロセッサを使用したPCなどを入手する必要がある。現状では、在庫まだがあるため入手は困難ではないが、2017年秋以降に、第8世代のCoreプロセッサ(Coffeelake)がリリースされたり、2017年末〜2018年にリリースされる第9世代Coreプロセッサ(Cannonlake)が主力ラインアップに搭載されたりするようになれば、第6世代CoreプロセッサのPCも入手しにくくなっていくだろう。そうなれば、Windows 7の利用を継続してきた企業も、Windows 10への移行を余儀なくされる。なお、Windows 7の延長サポートは2020年1月14日に終了する。
Edgeのリリースサイクルが変更される可能性
Windows 10に関しては、今後年に2回アップデートされることが決まったが、WebブラウザのEdgeに関しては、ライバルのGoogle ChromeやFirefoxなどと比べると、年に2回のアップデートでは回数が少ない。
そこでEdgeについては、Windows 10のアップデートと切り離して、より高い頻度でアップデートしていこうという計画がある。現状ではまだ正式に発表されていないが、Edgeのアップデートに関するインフラが整った段階で、アップデートスケジュールの変更が発表されるだろう(Edgeのアップデートは、Storeからのオートアップデートになると予測される)。
OSと同じ、年2回のアップデートのままでは、どんどん進化するChromeやFirefoxと戦って行くことは難しいからだ。
また、Edge自体をiOSやAndroid、Linuxのアプリとして提供する計画も存在するという。EdgeのJavaScriptエンジン「Chakra」は、オープンソース化して「Chakra Core」として公開されている。EdgeのHTMLレンダリングエンジン「Edgehtml」のオープンソース化という計画もあるようだ。このあたりがそろえば、Windows 10以外のOSに、Edgeブラウザを提供する環境が整うだろう。
また、Edge自体はUWPアプリとして開発されているため、Microsoftが買収したマルチプラットフォーム用の開発環境「Xamarin」を使用すれば、Windows 10以外のOS向けにリリースすることも容易なはずだ。iOS、Android、Linuxでも動作するEdgeが提供されるかもしれない。
Microsoftでは、Windows 10だけでなく、iOS、Android、LinuxでもUWPアプリが利用できるように、コードを実行するインフラの「.Net Standard」、UIを構築する「XAML Standard」を規定して、UWPアプリを簡単に各OSに移植できるようにした。XAML Standardにより、開発ツールのVisual Studioで、1つのコードから、Winodws 10、iOS、Android、Linuxなどのアプリが構成できるようになる(de:code 2017の講演資料から引用)
Windows 7を中心に使っている企業にとっては、2017年から2019年の3年間はWindows 10への本格移行期になるだろう。Windows XPのときは、多くの企業がサポート終了間際にバタバタとアップデートし、混乱したことを考えれば、そろそろ移行計画を立てて、本格的に全社のPCをWindows 10に移行することを考えておいた方がよさそうだ。
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