人工知能を単なる「自動化の道具」だと勘違いしていないか:真説・人工知能に関する12の誤解(3)(1/3 ページ)
昨今、ロボットや人工知能を「疲れ知らずの労働力」や「自動化の道具」だと捉える人もいますが、本当にその考え方で正しいのでしょうか。
人工知能と人間、両者の違いの1つは「疲労の差」だといわれています。
人間の場合、肉体労働でも頭脳労働でも、作業を続けているとだんだんと疲れてきます。集中力も下がり、判断ミスが起きやすくなります。一方で人工知能の場合、疲れるという概念がないので、長時間に渡って同じ量のアウトプットを供給し続けられます(マシンのオーバーワークで故障することもあるかもしれませんが)。
そのためか、「人工知能は21世紀における自動化の道具だから、簡単な作業は人工知能に任せて生産性の向上を図り、人間にしかできない仕事に専念すべきだ」と主張する方もいます。私もこれからは「人間にしかできない仕事」に着目すべきだと思いますが、一方で、人工知能を単純に「自動化の道具」と見なしてよいのでしょうか。
人工知能はあらゆる産業をアップデートする
人工知能のビジネス活用を考える際、Bloomberg BETAのキャピタリストが、人工知能領域で事業を行っている企業をまとめた図「The Current State of Machine Intelligence」は必見です。現在はVer.3.0が公開されています。
“deep learning”によるブレイクスルーで、第3次人工知能ブームが起こり、米国では人工知能領域のスタートアップ企業は増加の一途にあります。次回のVer.4.0では、1枚の図にまとめるのは難しいかもしれません。この図を見てみると、右側を占める開発環境やインフラ基盤を指す“テクノロジスタック”は別として、左側は既存産業で活躍する企業が多くを占めています。
ここから分かるのは、「人工知能業界」というような特定の業種があるわけではなく、関連する手法を用いて、既存産業で変革が起きているということです。人工知能というのは、それ単体で何らかのビジネスが成立するというより、顧客に高い付加価値を提供するための手法の1つだと考えるべきでしょう。
そのため、「人工知能は自動化の道具」という言葉は誤解を招く表現だと言えます。自動化というのは、顧客に与える付加価値の1つに過ぎません。本質的には「人工知能は高い付加価値を提供するための道具」なのです。
私も、人工知能とマーケティングを交差させた研究開発に従事していますが、自動化よりも、人工知能を使った今までにない付加価値を生み出すように心掛けています。今は「スペシャリストの7掛け、プレイヤーの中央値以上」をたたき出すAIマーケターを目指して開発を続けています。
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