人工知能は新ビジネスを生み出さない:真説・人工知能に関する12の誤解(4)(1/3 ページ)
人工知能を事業に導入したい――そう言われたら、あなたはすぐにアイデアが浮かんできますか? 思い浮かばなかったという人、それには理由があるのです。
昨今、業種を問わず、多くの企業から「人工知能を使って○○をしました」というプレスリリースが相次いでいます。こうした状況から、トップダウンで「弊社も人工知能で何かできないのか?」という指令が下る企業も少なくないようです。
とはいえ、そんな指令を受けた現場は大変です。「人工知能はかなり高度な技術で、何の訓練も受けていないわれわれでは作れない。大学の研究室に依頼するか、年収何千万で人を雇うしかない……」と、そんな話を聞くこともあります。もちろん、そのような資金とブランド力を兼ね備えた企業は、ごく少数だとは思いますが。
しかし、ここには大きな誤解があります。ビジネスの現場で活用する人工知能は、本当に高度な技術が必要なのでしょうか?
「AIで何か新しいことができそう」という誤解
そもそも、ビジネスの現場では人工知能がどれだけ活用されているのでしょうか。総務省が刊行した「平成28年版情報通信白書」の一節で具体例が挙がっているのでご紹介します。
職場への人工知能(AI)導入の有無および計画状況について、日米それぞれにアンケートを実施したところ、以下のような結果になっています。
日本で、人工知能の導入に取り組んでいる企業(検討段階含む)が10.6%であるのに対して、米国では30.1%と約3倍の開きがあります。日本では「人工知能? なんかスゴいらしいねぇ」と捉えている人が多いのが現状だと思われます。
では、導入に取り組み始めている人たちの職場では、人工知能にどのような役割を期待しているのでしょうか。以下の結果をご覧ください。
労働力の補完や生産性向上など、日米で差が出た項目は複数ありますが、私が注目したのは、「これまでに存在しなかった新しい価値をもった業務を創出する」という項目で日本が比較的高い点です。「人工知能で一山当てたい」というもくろみのようなものを感じます。
“人工知能とは何か”がよく分からないから、何ができるのかも分からない。だからこそ、数々の制約や特有の問題にまで考えが及ばず、「何か新しいことができそう!」という夢を抱くビジネスマンが多くいるのかもしれません。
このまま、一昔前のビッグデータ、マーケティング領域で言えばDMPやMAなど、言葉先行で「よく分からないけど何かすごそう」というハリウッド映画の予告上映のようなセールストークで、顧客に期待させるだけ期待させてガッカリした“黒歴史”が人工知能でも繰り返されるのでしょうか。
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