クラウドシフトで“脱・売り切りモデル”の組織へ 大型組織変更に見るMSの覚悟(前編):Microsoft Focus(2/2 ページ)
日本マイクロソフトが、セールス、マーケティング部門を“クラウドによるコンサンプション(消費)”をベースとした組織に再編した。新たな組織体制が今後の日本マイクロソフトのビジネスに与える影響とは? 2回に渡って考察する。
多角的できめ細かな新体制でエンタープライズビジネスを加速
クラウド時代に向けた新たな組織体制として象徴的なのが、エンタープライズ部門の6つの組織だ。
そのうち、先に触れたグローバル企業を担当するグローバル事業本部と、ユーザー企業を担当し最も多くの顧客を抱えるエンタープライズ事業本部、公共分野や教育分野を担当するパブリックセクター事業本部の3つは、法人を直接担当する営業組織で、特に金融、流通、製造、政府・自治体、教育、ヘルスケアの6つのインダストリーを重点業種に位置付ける。もちろん、これは直販を強化するものではなく、パートナーを通じたビジネスが基本路線であることに変わりはない。エンタープライズ部門の各組織とパートナーとの協業によって、これらの重点業種を攻略することになる。
そして、200人規模で新設したクラウド&ソリューション事業本部、100人規模となるデジタルトランスフォーメーション事業本部は、技術的な切り口から、新たなクラウド案件を獲得する役割を担う。
日本マイクロソフトでは、デジタルトランスフォーメーションの実現に向けて、「社員にパワーを」「お客さまとつながる」「業務を最適化」「製品の変革」という4つの枠組みを提示してきたが、2017年7月以降、これに加えて「モダンワークプレース」「ビジネスアプリケーション」「アプリケーション&インフラストラクチャ」「データ&AI」という4つのソリューション枠を新たに追加した。
クラウド&ソリューション事業本部とデジタルトランスフォーメーション事業本部では、この4つのソリューション枠から、「Microsoft Azure」をベースにした新規案件を獲得する戦略的組織であり、評価の指標となるのは「コンサンプション(消費)」。まさに「クラウド時代の組織」を象徴するものとなる。
エンタープライズサービス事業本部は、これまでと同様に、技術面からエンタープライズユーザーをサポートする組織になる。
日本マイクロソフトの平野社長は、「Azureをプラットフォームとした業務特化ソリューションをこれまで以上に出していきたいと考えている。今回の新組織では、業種向け営業部隊を再編して、スペシャリストによる業種アプローチを徹底する」と意気込む。
6つの重点業種のうち、製造業では、IoTを活用した工場現場の革新のほか、コネクティッドカーやスマートコンストラクションなどにAzureを活用。教育分野では、日本の大学の競争力向上や、グローバル人材の育成にAzureを活用していくことを示した。また、金融分野においても、国際競争力の向上に加えて、Fintechによる新規ビジネスの創出にAzureの活用を提案していくことを提示。ここに6つのエンタープライズ組織が連携しながら、営業活動を推進していくことになる。
特に、最大顧客数を抱えるエンタープライズ事業本部は、日本マイクロソフトにとって、メインストリームともいえる領域であり、ここには依然として数多くのオンプレミスユーザーが存在する。これらの顧客をいかにクラウドへと移行させるかが、新たなエンタープライズ事業本部に課せられたテーマとなっている。
ここでは、「日本マイクロソフトが自らデジタルトランスフォーメーションを実践してきたノウハウを、日本のエンタープライズユーザーに対して提案していくことになる」(平野社長)との姿勢も示している。
6つの組織で構成されるエンタープライズ部門は、クラウドをビジネスの主軸にした営業組織となり、その評価指標も変わっている。
後編では、パートナー事業本部、インサイドセールス事業本部、コンシューマー&デバイス事業本部のビジョンにフォーカスする。
関連記事
- 連載:「Microsoft Focus」記事一覧
- 日本マイクロソフトがクラウド売上比率にこだわる理由
日本マイクロソフトが、直近の四半期で、全売上高に占めるクラウド比率がおよそ5割になったことを明らかにした。同社がかねてこの比率にこだわってきたのには理由がある。 - 「Azure NVシリーズ ローンチイベント」に見るGPUクラウド時代の到来
機械学習といった高まる需要から、パブリッククラウド上の仮想マシンでもGPUが求められるようになった。今回は、先日開催された日本国内での「Microsoft Azure NV シリーズ」のローンチイベントからGPUの必要性を考察する。 - NECと日本マイクロソフト、Azure販売で協業体制を強化
NECと日本マイクロソフトがクラウド領域における戦略協業を強化。Microsoft Azureの販売体制を1500人規模、構築の技術体制を100人規模で新設し、サービス拡充を図る。 - 働き方改革を“企業成長の武器”に MSの取り組み、第2フェーズへ
働き方改革担当を務める現役大臣の訪問を受けたマイクロソフトは、あらためて働き方改革への意気込みを語った。自らの取り組みに確かな手応えを得てきた同社が次に目指す“働き方改革2.0”とは?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.