AI分野で次々と“競合と協業”するMicrosoft、その狙いは:Mostly Harmless(1/2 ページ)
Amazonの次はFacebookと――。Microsoftが相次いで“競合と協業”する狙いは。
この記事は大越章司氏のブログ「Mostly Harmless」より転載、編集しています。
先日、スマートスピーカー(と実質的にはAI)についてのAmazonとMicrosoftの提携について書いたばかりですが、新たにMicrosoftとFacebookがONNX(Open Neural Network Exchange)で提携というニュースが飛び込んできました。
この2つのニュースの共通点は何かというと、どちらもAIに関するライバル企業との提携ということです。IT業界で競合する他社と提携するのはよくあることですが、今回はちょっと珍しいのではないかと思います。ひょっとするとMicrosoftは戦略的なレベルでギアを入れ替えたのかもしれません。
というのも、これは、特定の技術分野において、競合するプレイヤーが極端に少ない中での提携だからです。
提携というと、双方の技術を補完する形で行うのが一般的です。Microsoftは、クラウドへの参入に後れを取った2013年、仇敵Oracleとの提携を発表して世間を驚かせたことがあります。
しかし、この記事をよく読んでみると、AzureのHyper-V上でOracleを動かすということに過ぎません。技術的に何ら新規性はなく、マーケット向けのアドバルーン的な提携です。
しかし、AIについては状況が違います。現在米国でAIをけん引しているのは、Google、IBM、Microsoft、Facebook、Appleといったところでしょう(もちろん、その他大多数の企業も取り組んではいるでしょうが)。この5社は最先端の技術革新にしのぎを削っています。
Microsoftはそのうちの2社と立て続けに提携したわけです。ここまで完全に同じ分野で競合しているライバルと、技術面で提携するというのは珍しいと思います。先のMicrosoftとOracleの例でいえば、「SQL Server」と「Oracle Database」の相互連携とか、新機能の共同開発といったレベルの話です。
ちなみにこの5社は既にAIで提携を発表していますが、これは業界団体的なもので、技術提携とは少し違うと思います。
関連記事
- 連載:「Mostly Harmless」記事一覧
- 5分で分かる、「Alexa」と「Cortana」連携の狙い
AmazonとMicrosoftが、AI音声アシスタント同士の提携を発表。いったいどんな狙いがあるのか。 - 死角なし? 決算から読み解くMicrosoftクラウド戦略のターニングポイント
米Microsoftの2017年度第4四半期決算では、クラウド戦略に関するさまざまな転換点が見えてきた。 - MicrosoftとFacebook、AI開発者向けオープンソースプロジェクト「ONNX」
AI分野で競合するMicrosoftとFacebookが、開発フレームワーク間のスイッチングを可能にするためのオープンソースプロジェクト「Open Neural Network Exchange(ONNX)」でタッグを組んだ。Facebookの「Caffe2」と「PyTorch」、Microsoftの「Cognitive Toolkit(CNTK)」が対応する。 - Microsoftが描く「デジタルトランスフォーメーションの世界観」
今や企業におけるIT活用の最大のキーワードである「デジタルトランスフォーメーション」。その「世界観」を日本マイクロソフトから聞く機会があったので考察しておきたい。 - MicrosoftのAI技術は今、ここまで来ている
日本マイクロソフトがパートナー向けのカンファレンス「Japan Partner Conference 2017」で、同社のAI技術の最先端を披露した。認識技術では人間を超えるものも出てきている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.