答えられなかった質問はスタッフに確認――自ら“成長”する音声対話AI 日立が開発
日立製作所(日立)は、答えられなかった質問を職員に確認して自発的に“成長”する「音声対話AI技術」を開発した。
日立製作所(日立)は9月28日、ヒューマノイドロボット「EMIEW3」による接客、案内サービスでの活用を想定し、対応できなかった質問を職員に確認して自発的に日々“成長”する「音声対話AI技術」を開発したと発表した。
日立は、これまでEMIEW3による接客、案内サービスなどの実証実験を行ってきたが、質問の言い方やニュアンスといった部分は、人により多岐にわたるため、意図を正しく理解できず、答えられない場合もあった。従来、このような課題には、システム管理者が継続的にログ分析を行い、答えられなかった質問に対して、対話コンテンツを定期的に拡充するという対応をしていた。
今回開発した技術は、対話コンテンツ拡充の効率化を目的に、EMIEW3が自発的に、答えられなかった質問を見つけ、原因を明らかにし、不明点を職員に確認することで、自発的に学習する仕組みだ。システム管理者によるログ分析が不要になるうえ、業務知識を持つ職員がEMIEW3の質問に回答するだけで対話コンテンツを拡充できるようになり、工数を約10分の1に削減できることを確認したという。
また、同技術を利用することで、EMIEW3は、変化の激しい製品や施設に関する情報をより早く学習でき、質問者の意図をより正確に理解して回答できるようになるという。
学習速度を高める2つの技術
この新技術は、「自発的に学習する技術」と「学習した『言い方』を効率良く活用する技術」により実現されている。
機械学習を用いて不明点を特定し、自発的に学習する技術では、答えられなかった原因を分析して、答えが登録されていなかった場合と、言い方の違いにより意図を正しく理解できなかった場合の2パターンに分類する。
答えが登録されていなかった場合は、EMIEW3は職員に答えを聞く。言い方の違いで答えが特定できなかった場合は、質問応答データベースに登録されている類似質問を検索し、その類似質問と同じ意図の質問であるかを職員に確認。職員の回答から学習した新たな答えや言い方は、質問応答データベースに自動的に登録する。
学習した言い方を効率良く活用する技術では、テキストを形態素(意味を持つ最小の単位)に分割して、品詞を判別する形態素解析や、形態素間の関係(修飾関係や主語述語関係)を同定する構文解析などの自然言語処理技術を活用。
この形態素解析と差分検出により、質問の意味が同じ2つの言い方から置き換えが可能な部分を見つけ出し、言い方の違い(言い換え)の規則を学習する。さらに、構文解析と機械学習を活用することで、間違った言い換えを覚えていないかもチェックし、より正確な言い換えの規則を生成。これを他の質問にも適用することで、言い方のバリエーションを増やすという。
日立は今後、「Haneda Robotics Lab」と共同で、羽田空港における同技術を搭載したEMIEW3の実証実験を予定している。
関連記事
- 人工知能と人が、本当の意味で“話せる”ようになる日
昨今「Watson」や「りんな」など、人間と会話ができる人工知能が注目を集めている。しかし、これらは人間の心を理解してコミュニケーションを取っているかというと、そうではない。いつか本当に人工知能と人が心を通わせるような時代は来るのか。人間と雑談できる対話システムを開発し続ける第一人者に話を聞いた。 - 日立、羽田空港で人型ロボットの接客実験を開始
日立製作所と日立ビルシステムは、ヒューマノイドロボット「EMIEW3」EMIEW3」が利用客の問いかけに応えて空港施設や店舗情報などを案内する実証実験を羽田空港国内線第2旅客ターミナルで開始した。 - JAL、羽田空港でスマートウォッチの業務利用を実験
野村総研と共同で、スピーディーな顧客対応や効率的なスタッフ配置におけるウェアラブルデバイスの活用を検証する。 - AIを用いてネットワークを監視、潜在リスクを検知して可視化する新ソリューション
日立製作所がAIを活用してネットワークの速度低下やシステム障害の予兆を検知する「システム稼働リスク可視化ソリューション」の提供を開始。システム障害の予兆検知や障害発生時の問題切り分けなどを支援する。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.