AIのカスタマイズをノンプログラミングで 「AIの民主化」を加速させるMicrosoft:Microsoft Focus(3/3 ページ)
“誰でも使えるAI”の提供を目指すMicrosoftが、その取り組みを加速させている。どのようなアプローチで“AIの民主化”を進めているのか。
機械学習の領域でAIリーダー企業とタッグも
AIの民主化は、機械学習の領域でも推進している。
例えば「Azure Machine Leaning Studio」では、データサイエンティストが活用している70種類以上の標準的な関数を用意。専門知識を持たなくても、これらの関数を利用したり、多くのデータと簡単に連携したりといったことが可能になり、プログラミングも一切必要ないという。
また、「Cortana Intelligence Cloud Service Gallery」では、幾つものテンプレートを用意。これもAIの導入を容易にしている。
「金融のアノマリー解析、製造ラインの設備保守など、用途に対応したテンプレートを活用できる。Microsoftが用意したテンプレートだけでなく、サードパーティー製のテンプレートも用意している」(榊原氏)
一方で同氏は、AIの民主化に向けた社内外の取り組みにも言及した。社内の取り組みとして挙げたのは、「AIEThER(AI and Ethics for Engineering and Resech=エイサー)」である。これは、AIの開発に向けた倫理規定を定めたもので、同氏はそれにのっとったAIの開発を進めていることを強調した。
「Microsoftでは、AIは人間の仕事を奪ってしまうのではなく、人間の能力を補完し、支援し、補助するシステムであると定義している。この考え方に基づき、プログラミングの段階、開発の段階、リリースの段階といった重要なステップにおいて内容をチェックする。法務部門やマーケティング部門なども参加したアドバイザリーパネルによってそれが行われ、倫理規定が守られた上でAIが開発されていることを確認している」(榊原氏)
社外での取り組みとして挙げたのは、「Partnership on AI」の設立に参加したことだ。これは、Amazon、Facebook、Google、IBMとともに設立し、現在は多くのIT企業が参画するAI研究団体で、AIに関する倫理的問題、技術普及などに取り組んでいく。
こうした取り組みが、“AIを相互に活用する基盤づくりにもつながる”とする同氏は、「2030年頃には汎用的なAIが登場するだろう。それまでは特化型のAIが中心になる」と見ている。つまり、当面のところAIの利用拡大に向けて重要なのは、“特化型のAI同士がつながること”というわけだ。
例えば、“気象情報に特化したAI”と“渋滞情報に特化したAI”が連携することで、より最適な形でのカーナビゲーションが可能になるのも、その一例だ。
「AI同士が話し合いを行い、それを可読性があるサービスとして提供することが必要。そこに標準となるAIプラットフォームの存在がある。その上で稼働するアプリケーションが増えれば、利便性が高まることになる。今はまだプラットフォームを充実させなくてはならない段階にある」(榊原氏)
これもAIの民主化には必要な取り組みといえるだろう。
榊原CTOは、「Microsoftのミッションである『地球上の全ての人々と、全ての組織が、より多くのことを達成できるようにする』ために、AIを活用したい」と語る。
MicrosoftのAIへの取り組みは、常に“民主化”の考え方がベースにある。その取り組みを推進していくには、社内での倫理規定の徹底とともに、社外のさまざまな企業との連携がカギになるといえそうだ。
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