AIのカスタマイズをノンプログラミングで 「AIの民主化」を加速させるMicrosoft:Microsoft Focus(2/3 ページ)
“誰でも使えるAI”の提供を目指すMicrosoftが、その取り組みを加速させている。どのようなアプローチで“AIの民主化”を進めているのか。
「Cortana」と「りんな」で“AIを民主化”
Microsoftの音声認識には、2つのサービスがある。
1つは、「Windows 10」などに利用されているパーソナルアシスタントの「Cortana」だ。Cortanaは、全世界で約5億台のデバイスに搭載されており、これまでに130億以上の質問に回答した実績を持つ。また、1000以上のアプリに統合されており、毎月1億4500万のアクティブユーザーが利用しているという。
Cortanaは、先頃、「Amazon Alexa」と連携することを発表した。Alexaが、Windowsデスクトップ上で動作するCortanaを呼び出し、商品を注文するといった使い方を提案するものであり、「Amazonにとっては、5億台の端末にアプローチできるメリットがある。また、AlexaはB2C向けのサービスであり、CortanaはB2Bにフォーカスしたサービスがベースとなっている。今回は、お互いにいい補完関係を持つことができた」(榊原氏)という。
Cortanaはほかにも、AIスピーカーの領域に進出しており、既にHarman KardonとHPのAIスピーカーに技術を提供した実績があるが、Microsoft自体はハードウェアを作らず、協業によってこの分野にCortanaを提供する計画だ。
さらに、Johnson Controls(ジョンソンコントロールズ)はサーモスタットにCortanaを採用。BMWは自動運転に関する音声対話にCortanaを活用している。また、日産自動車は、クルマにCortanaを採用するだけでなく、「Office 365」や「Skype」にも対応。「ダッシュボードにPowerPointのスライドを表示することも可能」(榊原氏)だという。クルマがオフィスになったり、プレゼンの場にもなったりしてしまうのだ。
もう1つの音声認識サービスは、日本マイクロソフト独自のサービスとして提供している女子高生AI「りんな」である。
りんなは女子高生という設定のAIで、女子高生を相手にしているような会話ができるだけでなく、クイズやしりとり、似顔絵、ファッションチェックなども楽しめる。女子高生の登録者も多く、現在、LINEで約500万人、Twitterで約70万人の合計約570万人が登録している人気サービスだ。ローソンは、この技術を利用し、2016年9月より「ローソンクルーあきこ」としてチャットボッドサービスを提供している。
2017年春には、りんなの男子版で俺様キャラクターの「イケメンAI りんお」を期間限定で公開し、新たに女性ユーザーを獲得したという。
同氏は今回、りんなの新機能として、「りんなライブ」を開始したことを明らかにした。chatbotのりんなは1対1での対話を前提としていたが、りんなライブは、1対多人数での対話ができ、100人との同時対話にも対応。音声による返事も可能になった。非難めいたことを言うとりんなが落ち込むなど、感情パラメータを導入しているのも特長の1つだ。
このように、りんなは、さまざまな機能を提供することで、技術検証する役割も担っている。
ちなみに、Microsoftの音声認識技術の誤認識率は5.1%で、人間の5.9%の誤認識率を下回っている。また、画像認識技術でも3.5%の誤認識率を達成しており、5.1%という人間の誤認識率を下回っている。「すでに、人間の領域に入ってきている」(榊原氏)というわけだ。
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