世界の食糧問題を解決するためには、データ分析の力が必要だ(2/3 ページ)
米Teradataの年次イベント「Teradata PARTNERS Conference」がスタート。基調講演で登壇したモンサントのトロイ・クライツ氏は、「データ分析が農業ビジネスの未来を左右する」と熱く語る。
「どの種がどんな土壌に適しているか」をデータ分析で予測する
雑草や害虫に耐性があり、干ばつや熱に強く、高収量の品種を作る――そんなイノベーションを実現するには、どんなデータ分析が必要になるのだろうか。クライツ氏は、この問題に対して、製品データと顧客データに容易にアクセスできることの重要性を語った。
モンサントの場合、製品は「植物の種」、顧客は「農場主」だ。Teradataの導入以前は、「SAPやSalesforceなどのデータソースからデータを抽出し、そのデータを組み合わせて、分析環境にロードするプロセスを分析のたびに繰り返していた」とクライツ氏は振り返る。この方法ではリードタイムが長くなり、コストもかさんでしまう。
そこで、同社はデータソースにリアルタイムにアクセスできる環境として、エンタープライズデータプラットフォームを構築し、データサイエンティストやビジネスアナリストをデータ処理のプロセスから解放し、問題解決に集中できるようにしようと考えた。
最初はグローバルの野菜ビジネス向けに、8週間で開発したプロトタイプの活用から始め、徐々に他のビジネスやSCM、財務、オフィスマネジメントなどに拡大し、本当の意味での「エンタープライズDWH」と呼べる水準のものを構築したという。
「今ではSAPのデータから、5分ごとに1500以上のデータテーブルを作成し、これらのデータをSalesforceなど他のデータソースとリアルタイムに連携させ、再利用可能な情報モデルを作成できている」(クライツ氏)
得られた成果は「非常に良い」とクライツ氏。製品データはモンサントの資産であり、顧客をよりよく理解するためにも使いたいという考えから、グローバルダッシュボードを作り、コスト効率、品質、安全性、農場主からの評判、従業員といったデータを可視化した。その結果、以前は詳細な把握が難しかった顧客インサイトを容易に得られる環境ができたという。
Teradataをデータプラットフォーム構築に使った結果、社内のさまざまなチームが恩恵を受けているとクライツ氏は話す。例えば、カスタマーサポートは顧客のパフォーマンスを追い、「完璧なユーザー体験を提供できるようになった」という。また、コストマネジメントの部隊は、Teradataをレポーティングツールの基盤として使い、財務チームは連結決算のデータ基盤として使っている。
さらに、データ分析チームは、顧客の継続的な利用意向を把握するためのNPS(Net Promoter Score)モデルや、販売の効率性を把握するモデルを作っている。さらに進んだ分析の利用例としては、過去のデータを学習する予測分析を活用し、出荷の予測精度を高め、農場主からの返品を減らすことや、予測結果から最適解を見つける処方的分析(Prescriptive Analytics)を活用し、どの種がどんな土壌に適しているかを見つけたことをクライツ氏は挙げた。
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