少ない学習で高い正答率のAI、富士通がコンタクトセンター向け「CHORDSHIP」(2/2 ページ)
富士通がAIを活用したコンタクトセンター向けソリューションを発表。事前に膨大な教師データを学習させなくても、企業が保有しているFAQなど既存データのみで高い正答率を実現できるという。
少ない教師データで高い正答率が得られるワケは?
事前に膨大な教師データを学習させなくても、企業が保有しているFAQなど既存データのみで高い正答率を実現できるため、スムーズにコンタクトセンター業務の自動化を図ることが可能だ。仮に利用者の求める回答がDigital Agentで得られなかった場合にも、オペレーターに交代して有人チャットによる継続対応を実現する「有人チャット運用サービス」も提供。専門スキルも持つオペレーターとのやりとりで得られた新たなナレッジを精査・蓄積することで、Digital Agentの回答精度向上も図れるという。
「AI技術だけでは、少ない教師データで高い正答率は得られなかった。実現できたのは富士通がグループ会社でコールセンター事業を行っていたから。そこでの20年間のノウハウが生きているからこそ、現場に即した最適なエンジンを作り出せた」(今田氏)。
CHORDSHIPの導入事例としては、家事代行マッチングサービスを行う「タスカジ」の問い合わせチャットbot(依頼者向けサポート窓口)で試験導入されている。
例えば「食あたりしたらどうなる?」といった曖昧な表現の場合、タスカジのFAQページでは検索しても該当ページにたどりつけないが、チャットbotでは言葉の揺らぎや類義語をしっかりと認識して候補となるページを列挙できている
また、川崎フロンターレのコミュニケーションチャネルとしての運用が予定されている他、オリエントコーポレーションでも既に実証実験を完了し本格導入に向けた検討を進めているなど、サポートが重視される金融・信販会社での展開も始まっている。
同社はデジタルイノベーション(デジタルテクノロジーによるビジネスの変革)の実現に向け、顧客企業とともに新たなビジネスやサービスを「共創」していくためのサービスプログラムを体系化。「産業・事業のデジタル化」「顧客関係のデジタル化」「組織・働き方のデジタル化」「社会・経済のデジタル化」の4つにソリューション領域を分けて実践している。2017年5月には「産業・事業のデジタル化」に向けた取り組みとして、組織・人材・技術の強化と共創の場を拡大するために顧客と一緒になって変革に取り組む「デジタルイノベーター」の育成支援事業を発表(関連記事:「デジタルイノベーターが変革のカギ? 富士通が育成、顧客企業支援へ」)しているが、今回のCHORDSHIPは2つ目の「顧客関係のデジタル化」に向けた提案となっている。
「少量の教師データで実用的な正答率を実現するCHORDSHIPは導入のハードルが低く、日本に適したソリューションだと考えている。先行するディープラーニング型AIを導入して使えなくて困っているお客さまの声も聴いている。AIやコールセンターといった富士通が持つ強みを横串でまとめ、コンサルを含めてソリューションとして全業種に提供するのが新設したデジタルフロントビジネスグループのミッション」(同社執行役員常務 デジタルフロントビジネスグループ グループ長の宮田一雄氏)。
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