予測モデルの更新を2カ月から2分に――AI分析の予測モデルを自動更新するNTTデータの新技術
NTTデータは、AI分析の精度維持に必要な予測モデルの更新を自動化する技術「AICYCLE」を開発。予測モデルをモニタリングし、精度低下を検知すると自動的に更新する。
NTTデータは、AI(人工知能)を活用した分析業務の自動化を実現する分析オペレーション自動化フレームワーク「AICYCLE(アイサイクル)」を開発し、2018年1月から正式提供を開始する。
AICYCLEは、AIが予測を行う際の判断ロジックとなる「予測モデル」を、さまざまなビジネス関連データや、AIの予測結果・実績(予測と実績の良否)データを用いて自動的に評価し、精度低下を検知すると予測モデルを自動的に更新することで、予測精度(予測モデルの品質)を維持する技術。
AICYCLEでは、モデル品質を維持するための基盤システムとして、予測モデル構築に必要なデータを前処理(ETL)して蓄積する、予測モデルの精度低下を検知して再構築することで予測精度を維持する、予測の結果と実績データに加えて過去に運用した予測モデルを保存・管理するといった機能を備える。機械学習フレームワークは、顧客の要件やインフラ制約などに合わせて選択可能だという。
これまでは、AIによる分析、予測の精度を維持するために必要な予測モデルの更新は、データサイエンティストの手によって行われてきた。AICYCLEによって自動化することで、人手をかけずにより高頻度で予測モデルを更新できるようになる。
これにより、ビジネス領域におけるAI活用が拡大していく中で課題とされている、データサイエンティスト不足や、予測モデルがビジネス環境などの変化に追随できないことによって生じる予測精度の低下(予測モデルの陳腐化)といった問題の解決につながるとしている。
今後NTTデータは、自社で提供する各種ソリューションにAICYCLEを適用し、さまざまな業種、業界におけるビジネスのデジタルトランスフォーメーションの実現を支援していく考えだ。
なお、今回の正式提供に先立ち、三菱重工航空エンジンと実証実験を実施。高度な品質管理が求められる航空エンジンブレード製造工程にAICYCLEを導入し、不適合品の早期発見と工程改善の効果について検証した。その結果、不適合製品の発生割合を47%削減。また、メンテナンスにかかる工場の停止時間を25%削減し、従来は2カ月かかっていた予測モデル更新の所要時間を2分に短縮するなどの効果を確認したという。
三菱重工航空エンジンでは、IoT(Internet of Things)やAI活用によるSCM(サプライチェーンマネジメント)の高度化とスマートファクトリー化の実現のため、NTTデータと協業の下、AICYCLEの適用拡大を検討していく。
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