お酒の新境地でヒット連発、なぜシャープが? Makuakeとのコラボが成功し続ける理由:山岡週報(3/3 ページ)
シャープの社内ベンチャーが、シャープの蓄冷技術を生かした“氷点下の味わいを楽しむ日本酒”など、新感覚の製品を次々と生み出している。クラウドファンディングとタッグを組んだそのオープンイノベーションの原動力とは?
Makuakeが果たすオープンイノベーションにおける役割
昨今話題のドラマ「陸王」では、ランニングシューズの開発に行き詰まった中小メーカーが、融資を受けている銀行から技術力のある提携先を紹介してもらうシーンがありました。もちろん今でもそうした役割を銀行が担っているケースはあるでしょうが、今やクラウドファンディングを行ってきたMakuakeが、こうした「提携先の探索・関係構築」も担うという立ち位置にきています。
北原さん: 「これまで3000件以上のプロジェクトを実施してきたからこその、Makuakeを通じた緩いネットワークというのが形成されていて、それがまた新たなプロジェクトにつながっているのだと思います」
以前、紹介した、NEDOから提示された「オープンイノベーションの課題について5つの段階」に照らし合わせると、シャープとMakuakeはこの5つの課題をうまくクリアしてきたことが分かります。
- 課題1 オープンイノベーションの目的に対する理解
- 課題2 オープンイノベーションに取り組むための組織体制の構築
- 課題3 オープンイノベーションを行うにあたっての戦略策定/技術評価
- 課題4 連携先の探索
- 課題5 連携先との関係構築(交渉、契約、出資、M&Aなど)
(動き出した大企業、オープンイノベーションの「5つの課題」を乗り越えられるか - 山岡週報)
社内でクラウドファンディングへの理解を広め、「TEKION LAB」という組織体制を構築。そして研究開発事業本部として最終的なプロジェクト実施の意思決定のもと、Makuakeをハブに、提携先との関係を構築し、次々と新たなプロダクトを生み出していったのです。
シャープ社内での評価は?
こうして、「縁」と「運」、そして何より「人」に恵まれて成立してきたプロジェクトですが、果たしてシャープ社内での評価はどうなのでしょうか。
西橋さん: 「最初は社内でも『どれくらいもうかるの?』と懸念されたりもしました。もちろん、ビジネスとしてやるからには、赤字にはならないよう設定していますが、これ単発でもうかるというのではなく、この技術にどれくらい市場性があるのか、それを見極めるための取り組みとして理解してもらいました。TEKION LAB自体の認知が上がることで、この技術のブランドをつくり、ここから提携先や可能性を広げ、その後につなげていきたいですね。そういう意味では、2017年の一連のプロジェクトはさまざまなメディアで取り上げられ、成果としては上々だと考えています」
木内さん: 「Makuakeでは、“企画ありき”で考えるんです。ユーザーの喜んでいる顔が想像できるかを最重要視しています。そういう点では、これまで裏側で進められてきた技術が表に出る形でまず世に知らしめられたというのは、TEKION LABにとって良かったのかもしれませんね。B2Bの閉じた世界だけで進めていては、ここまで広がらなかったでしょう。日本酒とのコラボというB2Cの場で、まず名前を知られたことで、今、いろいろなところからシャープさんにもMakuakeにもお声がけがあるのはとても喜ばしいことです」
プロジェクトで終わらない、事業化への期待
クラウドファンディングが面白いのは、こうしたこれまで出てこなかった「製品が生まれる前のエネルギー」が可視化され、シェアできるところにあると個人的には感じています。製品化してほしい、できれば他の人にも届けてほしい、届けたい……、そういった思いがうまくつながっていけば、そのプロジェクトやチームは継続していけるのかもしれません。
ちなみに、取材した日はちょうど氷点下スパークリング日本酒「白那」の仕込みの真っ最中。年末には届くであろうそのお酒を、わが家の鍋パーティーに集まった友人たちに振る舞うのを楽しみにしながらこの記事を書いています。
できれば単発のクラウドファンディングでは終わらず、ぜひ継続できる「事業」として実現し、毎年楽しめる日本酒が購入できるよう育ててもらえるといいなと、一支援者として期待しています。
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