コインチェックの問題は、仮想通貨の技術とは切り離して考えるべきだ:Mostly Harmless
仮想通貨の高騰などもあり、注目を集めているコインチェックの流出事件。この事件を語るときに注意すべきは、取引所と通貨システムを分けて考えることです。
この記事は大越章司氏のブログ「Mostly Harmless」より転載、編集しています。
この数日の大きなニュースとなった、コインチェックの流出事件。2017年からの仮想通貨(暗号通貨)の高騰などもあり、大きな注目を集めています。
さらに、コインチェックの怪しげな運営についても指摘されるなど、いろいろなニュースが流れています。
しかし、ここで注意したいのは、「仮想通貨のシステムの安全性と、取引所での事件は別の問題である」ということです。
流出の原因は調査中ですが、現時点では不正侵入によるものである可能性が高いとされています。つまり今回の問題は、仮想通貨の仕組みそのものに問題があるのではなく、取引所のセキュリティに穴があったことによるサイバー犯罪なのです。
取引所と通貨システムは、分けて考えるべき
コインチェックは、仮想通貨を運用しているわけではなく、取引所です。取引所は、仮想通貨と円やドルなどの法定通貨を交換してくれたり、それらの通貨を預かってくれたりします。銀行というよりは証券会社に近いかも知れません。
今回の事件は、証券取引所のシステムに問題があったわけではなく、証券会社のコンピュータに誰かが侵入して不正な送金を行った、という方が近いでしょう。
仮想通貨は、実態がなく仕組みが複雑なため、なんとなく「怪しい」ものとみられがちですが、仮想通貨を流通させる仕組みであるブロックチェーンそのものの問題で通貨が流出したことはなさそうです(このあたりは調べきれていませんが、あったとしても多くはないと思います。ほとんどが取引所のセキュリティが原因のはずです)。
マウントゴックスは、結局は横領だった
仮想通貨の取引所による事件として思い出すのは、2014年のマウントゴックスの事件です。時価総額480億円相当のビットコインが消失した事件ですが、これも当初はサイバー攻撃によるものとされていました。
しかしその後、社長が逮捕され、業務上横領で起訴されています(現在も係争中)。これは言い換えると、銀行の頭取が取引記録を改ざんして顧客の預金を着服した、ということです。別に金融システムの問題ではありません。だから良かった、というわけではありませんが、サイバー犯罪以前の古典的な犯罪だったということになります。
とはいえ、やはり仮想通貨にはリスクはある
今回の事件は仮想通貨の問題ではないと言ったものの、仮想通貨の技術的なシステムには問題はなくても、取引の安全性や犯罪に利用される可能性に関する問題は存在します。
法定通貨を扱う銀行や証券会社には、厳しい規制や報告義務がありますし、相応のセーフティネットもあります。今回の事件は、仮想通貨について金融庁が法律を改正して登録義務を課しはじめた矢先の出来事でした。
発展が急すぎてもろもろの仕組みが追い付いていないのが現状です。現時点では、仮想通貨の利用には大きなリスクが伴うといわざるを得ません。
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