自社データと組み合わせればお宝に? 事例で解説する、今注目のオープンデータの使い方:データのじかん(2/2 ページ)
オープンデータの活用で企業がどのような価値を得られるのか――オープンデータの第一人者が説く活用のヒントとは?
オープンデータ活用で優れた予測モデルが生まれる
新しい製品、サービスの開発に限らなければ、すでに公的な統計データを使っている例はたくさんあります。
米国では、ニューヨーク大学のGovLabが新しい製品、サービスの開発にオープンデータを役立てている企業500社のリストを作成し、「Open Data 500」として公開しています。一方、日本政府が作っているリストでは30社です。個人的には日本でも100社超はありそうだと思うのですが、かなり厳しく見ているようです。
多いか少ないかでいうと、日本企業が積極的とはいい切れません。一般的なビッグデータの活用領域も社内利用に止まりがちですから、もっと外部のデータを活用する余地はあると思います。現状はオープンデータを探しやすい環境ではないので、使いやすい環境を作れば増えるのかもしれません。企業での積極的な利用が進んでいるわけではありませんが、よく探すと日本でも面白い事例が登場していますので、これは良い傾向だと思います。
共有から真の活用へ――オープンデータ活用事例
新たなサービスを開発するという意味では、「アプリから分析へ」と呼べるような傾向の変化が見えてきました。日本のオープンデータ活用は東日本大震災がきっかけです。当時は、避難所、トイレ、物資がどこにあるかを地図で示すような、すぐに使えるアプリを市民に提供することが優先されました。最近はもっと洗練されてきて、AとBの素材を地図上に置くだけではなく、何らかの分析をかけて結果を示しているのが特徴です。
例えば、おたにが提供する不動産取引における成約価格を予測する「GEEO(ジーオ)」はいい例です。このサービスは、ある地域の不動産価格を地図に乗せるだけの単純なものではなく、路線価、国勢調査、住宅・土地統計調査などの官公庁系のオープンデータを使って、任意の場所における不動産取引成約価格の予測をしています。
米国で先行している犯罪予測も有望です。まだ正式なサービスとしては提供されていませんが、東京都が公開している地域別の犯罪データを使って、優れた予測モデルを開発した人がいたりもします。
身近な事例にもヒントが
名古屋市を中心に愛知、岐阜、三重の3県を拠点とするつばめタクシーグループの事例は面白いと思います。同社はNTTドコモと共同で、カーナビにAIを搭載し、500メートル四方のエリア内、向こう30分間の需要を予測するシステムを開発しています。運転手がナビの指示する場所に行くと、本当にお客さまが拾えるのです。タクシー会社が持つ乗降記録とリアルタイムでの人間の位置情報のほか、気象データ、施設データ、イベントデータなどの公共データも予測精度を上げるために活用しているようです。
韓国のソウル市では、公共施設や駐車場の空き状況の情報を公開しています。市役所の職員向けの駐車場や備品なども市民とシェアしていこうとしているのが面白いところです。ソウル市のように「シェアリングシティー」を推進する中でオープンデータを位置付けるというのは日本でも参考になるのではないでしょうか。
企業自身が提供するケースとしては、東京電力の電力需給データの公開は有名ですし、2014年に開催された東急電鉄の「東急沿線データビジュアライゼーションコンテスト」(レポートはこちら)は面白い試みです。このイベントは、東急電鉄が乗降客数や駅周辺のデータを提供し、参加者に東急沿線に関するデータを可視化するアイデアを募るもの。東急沿線がいかに素晴らしいかを参加者が理解する機会にもなるわけで、企業にもデータを提供して広く使ってもらった方がいいデータがあるということです。
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